第12話 生き物

「生き物」


週末夜散歩。


あれは何だ?

頭、首、肩、背中、尾まで、まっすぐ一直線だ。


左から右へ、全長が、軽乗用車の車幅ほどに見える生き物が、車道を横切った。 まっすぐ細長い。

全身ぶれることなく、足取りは上に弾むように、軽快に動いている。

フェレットか?


色々な物を飼う人がいる。フェレットもその一つだ。

どこからか逃げてきたのか。

闇夜に人家の密集する方へ走り去った。


あれから、だいぶたつ。


駅に向かう。

人家と個人商店の入りまじりの地域。

幹線道路より一本入った、駅へ向かう道だ。

何かいる。


電線を伝って、生き物が行く。

紛れもなくフェレットだ。上手に細い電線を歩き渡る姿を目撃する。

かなり汚れて、毛繕いなど全くしていないのか、毛足があちこち向いて、ひどくボロボロになっている。 艶もない。


電線伝いに、二階建ての家の屋根あたりに入り込んで見えなくなった。

あの夜のフェレットなのかもしれない。


生きていたんだ。しかし、無残な姿に、言葉をなくす。


私は、何がいいのか悪いのか、わからなくなる。


物としての生き物〈ペット〉は、選べない生き方に憤りを感じているのだろうか。物としての生き物は、その生き方を出会いのところで、決められてしまうのか、自分の意思などない、他を知ることもない、その命終わるまで生きている。ボロボロの姿になっても。


私は、しばらくの間、入り込んでいった所を見詰めていた。


不遇など感じもしない朝がくる

今日も出掛ける生きるあかしを

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