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三
倒れた女の体を引きずるようにして、穴に放り込む。人間の体が意外と重いということを初めて知った。思えば、小学生の頃の組体操は一番上。人の体重を丸々支える経験なんてなかったな。なんてぼんやり考える。
夜の森は冷える。冷たい空気が、運動によって紅潮した頬を丁度良く冷やしてくれた。
新鮮な酸素で肺を膨らませ、二酸化炭素を吐き出してスコップを手に取る。重要なのはここからだ。彼女を埋めて、まだ夜であるうちにおまじないを完遂しなくてはならない。
盛り上がった土にスコップを入れ、女の顔にかける。苦痛に歪む顔を見ていると、なんだか悪いことをしたみたいで気分が悪かった。顔が見えないと、気持ちも幾分かマシだ。
どうせ彼女は明日ひょっこり生き返る。これが殺人と呼べるかという判断は——人によるだろう。
声を出して笑った。大きく。高らかに。まだ数の少ない蝉も眠っている。声が響いて反響した。
人は来ない。虫も鳥も木々も鳴かない。誰も来ない。誰も。
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