第5話 見せつけたいの?
テツヤがインスタに写真を上げた。さりげなく、リュックに付けたストラップが写るように撮られた写真。誰かに撮ってもらったのだろう。
そのストラップは、俺とお揃い。色違いのお揃いだった。俺がこの間空港で写真を撮られた時、そのストラップも写り込んでいたかもしれない。
また次の日には、ブレスレットを強調した自撮り写真を上げた。そのブレスレットは俺と色違いのお揃い。
どうしたんだ?なぜ俺とのお揃いの品をバンバン発表するのだ?見せつけているような感じ。でも、それは誰に向けてなのか。テツヤは一から十まで考えて行動する人だ。たまたま写ったなんて事はない。
テツヤがフランスからアメリカへとやってきた。俺たち7人の家にやってきたのだ。いやまあ、7人だけではない。他にスタッフの部屋もあるから。とても広くて部屋がたくさんある建物だ。楽曲制作の邪魔をされないようにここに来たわけだから、都会にある家ではない。大都市から車をだいぶ走らせてやってきたところだ。
「レイジ!」
俺が部屋で作曲をしようと頭を捻っていると、テツヤがやってきた。
「あ、お帰りなさい。じゃないか?」
俺が椅子から立ち上がろうとすると、その前にテツヤが俺を抱きしめた。
「おっと。」
抱きしめたというより、乗っかって来た。俺はテツヤの背中に腕を回した。
「ただいま。」
テツヤが俺の顔を見て言った。そして二人でフフフと笑う。
「この間はごめん。手をつないだとか何とかで……。確かに、後で映像を観たら俺もカズキ兄さんとつないでたみたいだ。でもあれは、カズキ兄さんの方からで、早くおいでって引っ張られただけだから。」
俺がそう言うと、
「分かってるよ。お前たちは兄弟みたいだもんな。まあ、一時そうじゃない時もあったけど。俺とノゾム兄さんも兄弟みたいなもんなんだよ。でもさ、手をつなぐ事はあっても、こんな事はレイジ以外の人とはしないよ。」
そう言って、テツヤは俺の唇に自分の唇をそっと重ねた。
くっ、可愛い。胸がキュンとするぜ。
「もう一回。」
俺がそう言うと、テツヤはニヤッと笑った。そしてまた顔を近づけてきたので、俺は下から首を伸ばし、その唇を迎えに行った。
「ねえ、どうしてインスタにあのストラップとか、このブレスレットとか載せたの?」
ひとしきりキスをした後、気になっていた事を聞いてみた。するとテツヤの答えはこうだ。
「レイジが空港に行くとさ、ものすごくたくさんのファンがレイジの後ろをついてきて、いつももみくちゃになるだろ?家にはストーカーが来るし。レイジは俺たちの中で一番若いし、とにかく今人気がありすぎでさ、危ないから。」
だが、ちょっとよく分からない。
「だから?え、ちょっと分からないんだけど。俺の人気と、ストラップの写真とどういう関係が?」
「レイジは俺のものだって、公表しておこうと思ってさ。俺のものだから、諦めなさいって。」
えー、そういう事?
「でも、あんまり伝わってないんじゃない?」
「そうなんだよなー。分ってくれる人は、既に俺たちを応援してくれていて、レイジにストーカーなんてしない人なんだよなー。」
テツヤは俺の膝の上から立ち上がった。
「ま、地道にちょっとずつでもさ、アピールするよ。」
まあ、テツヤがそうしたいならいいか。
「レイジ、ここのジムすごいな!一緒に運動しようぜ。いつやる?」
テツヤは目をキラキラさせて言った。運動を一緒にやるのは楽しいのだけれど、テツヤがこれ以上ムキムキになるのは勘弁願いたい。
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