無限の力を与えられて異世界転生した私の第二の人生がスライムとか弁護士呼びますか?

ラーさん

第1話 神様の間違いでトラックに轢かれた第二の私の人生はスライムでした

 神様の間違いでトラックに轢かれ(中略)お詫びの印に最強チートな無限の力を手にして剣と魔法のファンタジー世界に転生した第二の私の人生はスライムでした。


「ふぅぅぅぜぁけるなぁぁぁぁぁっ!!」


 私は咆哮しました。


「すぅぅらぁぁいむぅぅぅとかぁぁぁっ!」


 私は絶叫しました。


「ちょぉぉぉおぉぉぉずぅぅぅあこぉザコじゃねぇぇぇぇかぁぁぁぁっ!」


 私は泣き叫びました。チートとかいう甘い言葉にだまされて、私は人としての尊厳を失ってしまったのです。今の私はぷるんぷるんのスライムです。近くに流れていた川を覗き込むと、そこには青色の着色料をふんだんにぶち込んだ百円ゼリーのような姿の私がいました。転生チートで魔王も一薙ぎに富も名誉も手に入る最強無双の英雄イージーモード、キラースマイルで出会う女性も総なめのハーレム街道直結直通スーパー勝ち組人生の予定だったのです。今の私はぷるんぷるんしています。弱そうです。モテなさそうです。所持金は二ゴールドです。これは詐欺です。偽証罪です。誰か弁護士を呼んでください!

 しかし、私は気付きました。「この世界に弁護士などいるのか?」という話ではありません。スライムといえども無限の力を付与された最強チートでの転生だったはずです。実はスペック的には最強なのでは……! 私は一縷の望みをかけて、触手を振り上げ(腕の代わりになんか伸びました)全身全霊を込めて手近な岩を殴りました。


 ペチン。


 絶望なんて簡単に手に入るものです。


「お、スライムだ」


 打ちひしがれている私の背後から声がしました。人間です。いかにも「今日から冒険はじめました」的な、布の服におなべのフタにこん棒を装備した若い男です。その目はなにやらぎらついています。そう、まるで獲物を見つけた狩人のごとき目です。男は問答無用といきなりこん棒を振りおろしてきました。


「いただきだぜ!」


 迫り来るこん棒に絶体絶命の私! しかしここで私のチート能力が開眼――!


「お、一発で倒せた」


 ――しませんでした。

 無残につぶされた私。男は丁寧に私の持っていた二ゴールドもちゃんと拾っていきます。鬼です。この世には血も涙もないのです。それは今の私です。つぶされたのに血も涙も出ず、ぷるんぷるんが四散しただけの私です。誰か医者と弁護士を呼んでください。


「――あれ?」


 私を倒した男の様子がおかしくなりました。男は戸惑いがちに自分の身体を確認しています。よく見ると、なにやら男の身体が輝いているようです。そしてどこからかファンファーレのようなものが鳴り響きました。


 パラララパッパーパー♪


「スライム一匹倒しただけでレベルアップ?」


 この世界にはレベルがあるようです。スライム倒してレベルアップとかどこのド○クエでしょうか?


「おいおい、まじかよ……!」


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


 ファンファーレが鳴り止みません。男のレベルが次々と上がっているようです。


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


「う、うひゃー! なんなんだよ、この経験値!」


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


「と、とまらねぇ……!」


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


 レベルがまだ上がり続けているようです。男は最初こそ喜んでいましたが、次第に顔色が悪くなってきました。ファンファーレが鳴るたびに男の全身の筋肉が膨張し、ビクンビクンと脈動しながら異常発達を遂げてゆきます。なにやら煙のようなものも体中から発散され、怪しい輝きがその色を濃くしていきます。


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


「や、やべぇ……」


 レベルアップが止まりません。


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


「と、とめへ」


 異常成長に追い付かないのか皮膚は破れ散り、筋肉はむき出しになって全身から血が噴き出しています。膨れ上がる筋肉の内圧に耐えらなかったのか眼球は飛び出し、骨の成長も追い付かないのか、手足は筋肉に埋もれ男は血まみれの肉だるまのような姿に変わり果てました。それでもレベルアップは止まらないようです。


 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪

 パラララパッパーパー♪


 そして限界が訪れました。


「ひでぶ」


 はじけました。汚い花火のように男ははじけ飛びました。


「……まじかよ」


 私は要モザイクの姿に変わり果てた男の死体を呆然と見ていました。これはどうしたことなのでしょう? レベルアップを続けていた男がレベルアップに耐えられずに爆発。まるで北斗○裂拳を打ちこまれた世紀末モヒカンのような現象です。しかし、それはつまり……? そして気がつけば、バラバラに砕け散った私の体はいつの間にか元のぷるんぷるんに戻っていました。スライムだから再生でもするのでしょうか?


「まさか、最強の意味は……」


 私はそれを確かめることにしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る