宴での2人
王宮では、華やかすぎるほどの光があふれていた。
大広間には絢爛な装飾と、貴族たちの笑い声、音楽、色とりどりの料理。
まるで夢の中にいるようだった。
ミナは、その中央に立っていた。
豪華なドレスに身を包み、宝石を散りばめた髪飾りを揺らすその姿は、もはや雑貨屋の娘ではなかった。
しかし、彼女の内心は──ただただ、困惑していた。
「……すごすぎて、息が詰まりそう……」
そんなミナの手を、そっと取る人物がいた。
レオニール。
変わらぬ優しい瞳が、彼女をまっすぐ見つめている。
「驚かせてしまってすまない。でも……大丈夫。僕がそばにいる。何も心配しなくていいよ」
彼の手は温かく、どこまでも誠実だった。
その言葉に少し肩の力を抜いたミナは、ふと、彼に耳打ちされた。
「……抜け出そうか。静かな場所で、少し話がしたい」
王子に誘われるなどということは、本来なら大事件だ。
けれど彼がレオンだった頃のまなざしでそう言うものだから、ミナは素直に頷いた。
二人は宴の喧騒を抜け、静かな回廊を通って庭園へ。
夜風に揺れる木々の向こう、よく見覚えのあるまんまるの月が顔を出していた。
「……あの夜を覚えてる?」
「うん。雑貨屋で一緒に月を見てたよね。サラに邪魔されたけど」
レオニールは少しだけ照れたように笑った。
「本当はあのとき、言いたかったんだ」
「え……?」
「……君に出会って、初めて生きる意味を知った。君と一緒にいると、どんな未来も怖くない。
ミナ、君を愛している。心から、ずっと」
ミナの目が、潤む。
どこにいたって、どんな身分でも、この人は変わらない──
その想いが胸に満ちて、彼女は静かに微笑んだ。
「……私も。私もあなたを愛してる」
月の光が二人を包む。
雑貨屋でも、王宮でも、二人の間に流れる時間は、優しく、変わらずあたたかだった。
──そしてその頃。
城門の前では、騒がしい声が響いていた。
「ちょっと! あたしはお姉ちゃんの妹よ!? どうして入れないの!? 王子の“元・身内”なのよ!? ちょっとォォォ!」
叫ぶのはサラ。
派手なドレスに身を包み、なぜかティアラまでつけて門に詰め寄っていた。
衛兵たちは完全に慣れた様子で淡々と応じる。
「繰り返します。許可のない者は入れません。妃殿下のご指名も、今回は……」
「ちょ、レオニール呼んできてよ! ミナ呼んでよ! わたし、祝ってあげたいだけなんだからァ!」
「お引き取りを」
ぎゃんぎゃん喚くサラは、再び門の外へと──
あっさり、つまみ出された。
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