第23話 激情

バーン!!

「ふざけるな!」

俺は、机を叩いて叫んだ。

「何を勝手に、離婚だ、もう家族の資格はないとか言ってんだ!。」

純玲は、目を見張って俺を見ている。俺は、続けた。

「俺たちの20年、子どもたちとの15年余りの暮らしの重さをどう思ってんだぁ!そんなに簡単に手放せる軽いものだったのか!」


「何が、自分から不倫を持ち掛けただ、かっこつけてんじゃねぇ。あいつが、柾木が持ち掛けてきたんだろ!そうするしかなかったんだろ!」


「仕方がなかった!あなたや家族を裏切りたくなかった!ごめんなさい!許してください!15年もずっと後悔して生きてきました、と言って俺たちに縋れよ!家族を失いたくない必死の態度見せろよ!」


 俺は、叫びながら泣いていた。口惜しさと情けなさで。柾木に汚された悔しさ、純玲を守れなかった不甲斐なさ、俺を頼らなかった純玲への怒り、全てがごっちゃまぜになった、怒りの感情だった。


「ごめんなさい!許してください。私が愚かでした。あなたを子どもたちを失いたくない。」

 膝を着き、大粒の涙を流し、子どものように泣いた。純玲が初めて感情を露わにした。俺は、純玲の肩に手を掛けた。

「君のノート、日記かな、全部読ませてもらった。俺の単身赴任、大変だったな。俺にもっと頼ってほしかった。1人でなんでもできると思うな。俺は、そんなに頼りないか。」

純玲は、首を振った。

「じゃあ、俺に言う事は?」

「お願いです。この家に置いてください。一生償います。」

「それでいい。」


携帯を見つけてから、初めて俺と純玲は向き合った。


2時間後、子どもたちが帰ってきた。

「お母さん。もどってきたの?」

子どもたちが口をそろえる。

「今日から、また一緒に暮らすことにした。」

「ごめんなさい。お母さん過ちを犯してしまったの。でも、お父さんがこの家で償えって言ってくれたの。」

純玲は、頭を下げた。

由紀が

「過ちってなにしたの?」

「子どもは、知らなくていいの!」

と言った沙織に、大地が

「お前だって子どもだろ。」

と突っ込んだ。家族が元の形に少し戻った気がした。



 

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