第38話 劉備、天下を治める
天下統一を成し遂げた後、劉備は漢王朝の正統な後継者として、ついに帝位に就いた。その即位式は、華美なものではなく、質素で、しかし、深い感動に満ちたものだった。煌びやかな装飾も、高価な香も、派手な軍事パレードもない。ただ、集まった民衆一人ひとりの瞳に宿る、安堵と希望の光が、この日の式典を、何よりも雄弁に物語っていた。
玉座に座る劉備の姿は、以前と何も変わっていなかった。彼は、穏やかな笑みを浮かべ、集まった家臣たちと民衆に、深々と頭を下げた。その瞬間、民衆の中から、幼い子供が父に抱かれ、「お父さん、もう戦に行かなくていいの?」と尋ねた。その声に、劉備は、一瞬だけ声を震わせ、涙をこらえるように、そっと目を閉じた。そして、群衆の中からは、年老いた元兵士が、静かに涙を流し、「ああ、王二……ようやく戦が終わったぞ……」と、遠い戦場で散った戦友の名を呼ぶ声が聞こえた。劉備の旧臣たちが、彼らの背後で、静かに涙を流していた。彼らが流した涙は、戦友を失った悲しみと、ようやく訪れた平和への安堵、そして、劉備の志がこの平和な世界に結実したことへの、深い感動だった。女たちは、安堵の表情で手を取り合い、互いの無事を喜び合っていた。
「皆の者。この劉備、天下を統一することができたのは、皆の者のおかげに他ならない。特に、孔明と、その妻、月英殿の知恵がなければ、この平和な世は、決して訪れることはなかったであろう」
劉備は、そう言って、孔明と月英を玉座の前に招き寄せた。二人は、静かに、しかし、誇らしげに、劉備の前に進み出た。
「孔明。お前が、この乱世を終わらせ、民に平和をもたらしてくれたこと、心より感謝する。そして、月英殿。そなたの知恵は、武力よりも、人の心を動かす力を持つことを、この劉備に教えてくれた。そなたは、この国の、真の母である」
劉備の言葉に、私は胸の奥が熱くなるのを感じた。
(やばい、やばい、やばい……劉備に褒められちゃった!しかも、国の母だって!いやいや、そんな大それたものじゃないって!でも、劉備にそう言ってもらえるなんて……光栄すぎるんですけど!この感動を、どう表現すればいいの?いや、待って、これって、まさか劉備も、孔明と私の『幕の内弁当』計画に乗ってたってこと!?この人も、私と孔明が交わす、静かな目配せの裏に、全部の意図を察してくれてたってこと?え、そんなことありえる?だって、孔明の愛に触れたことで、私の暴走思考が、この国の運命を変えちゃったんだよ?もしかして、劉備も、私の暴走思考を、全部読んでたのかな……?いやいや、それはないか。でも、もしそうだったら、もう、孔明と劉備、二人して最強のイケメンコンビじゃん!やだ、最高!いや、待って……国の母……?その重責、私に果たせるだろうか……)
私の思考は、劉備の言葉に触れ、さらに暴走していく。それは、ただの妄想ではない。私の行動すべてに「必然性」を与える、新たな価値観の再構築だった。
劉備は、二人に、この国の未来を託すと語った。
「孔明、月英殿。この国の未来は、そなたたちの双肩にかかっている。民が豊かに、そして、平和に暮らせる世を、二人で築いていってほしい」
劉備の言葉に、孔明は、静かに、しかし、力強く頷いた。
「は。劉備様の御心に沿うよう、月英と共に、この国を、より良いものにして参ります」
その日の夜、私は、孔明と一緒に、夜空を見上げていた。空には、満月が輝き、その光は、私と孔明を、優しく照らしていた。
「孔明様……本当に、私たちが……」
私がそう言うと、孔明は、私の手を取り、その温もりを私の手のひらに伝えた。
「ええ。あなたの知恵がなければ、この平和な世は、決して訪れることはなかったでしょう。この勝利は、我らだけの勝利ではなく、すべての人々の願いによってもたらされた、真の勝利なのです。しかし、戦なき世を続けることこそが、最も困難な戦です」
孔明は、そこで言葉を区切ると、静かに、しかし、愛おしそうに、月を見上げた。
「空に輝く月のように、あなたの知恵は、この世を優しく照らし続けてくれるでしょう。月英、あなたの名が、この国の未来を照らす光となるのです」
孔明の言葉に、私は、平和な勝利への道が見えてきたことに、安堵の表情を浮かべた。劉備に褒められたことは確かだ。しかし、彼の言葉は、平和な世界の到来への、小さな代償なのだ。私は、そう自分に言い聞かせた。それは、私自身の罪悪感を打ち消し、この勝利に「意味」を与えるための、私にとっての「必然性」だった。
夕焼けに染まる空は、まるで、平和な未来を象徴しているかのようだった。その光は、私の心を照らし、前に進む勇気をくれた。
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