第7話復讐の復讐

高田馬場のカラオケ店の一室で男女2人が二酸化炭素中毒によって倒れた。すぐさま警察と救急車そして、火事が起きてないか消防車まで来ていた。

「どうやら運ばれた男女のうち女は死亡。男の方は特異体質だったみたいで生きているとのことだ。」

刑事の柏木が状況を確認した。相棒の戸田は柏木に話しかける。

「死因は二酸化炭素中毒ですよね?カラオケルーム内は密室だったはず。ということは、換気扇に何かしらの異常があったと考えるのが自然でしょうね」

「あの換気扇は裏路地の排気口と繋がっていた。そこに何かしらの手がかりがあるはずだ。」

柏木と戸田はカラオケ店の裏路地の排気口の前まで行った。

そこにあった排気口の管のうちの一つは表面が黒く焦げていた。

「これって…」

戸田が声を飲む

「あぁ。殺人事件だ。ここの中に火を出して、出た二酸化炭素を密室のカラオケルームに送ったって訳だ。」

「この近くに監視カメラないんですかね?」

「それがこの裏路地にはねえんだ。」

戸田は違和感に気づく。

「あ。でも燃えてる排気口管は一つだけですね。」

「ということは無差別殺人じゃない。犯人は狙って殺したんだ。」

「戸田、カラオケ店のここ数日の監視カメラの映像を確認しろ。」

「なるほど。複数の排気口はどことどこの部屋と繋がっているか確認する為に犯人はカラオケ店内を何度も訪れている可能性がありますね。」

「あぁ。俺は生き残った男と面会してくる。」

柏木と戸田はそれぞれ別の方向に向かって歩き出した。

柏木は被害者の男が運ばれたとされる病院に着くと、その男のいる病室へ、足を運んだ。

柏木が病室に入ると、その男はベッドから体を起こし、柏木の方を見た。

「刑事の柏木だ。君名前は?」

「沼田です。」

沼田は会釈した。

「沼田君、今回の事件君はカラオケルーム内で女性と一緒に倒れてる所を発見された。一緒にいた女性は死亡…」

そこまで言いかけた瞬間、沼田は発狂した。

「立原は!あいつは死んだんですか…?」

柏木は表情を暗くして、

「あぁ。二酸化炭素中毒による窒息死だ。」

「そんな…どうして俺だけ助かったんです?」

沼田が半狂乱状態になりながら言った。

「君は特異体質だ。恐らく体の中で毒を分解することが出来る。今回二酸化炭素を体内で分解して助かったんだろう。まぁ意識を失ったってことは体内で分解するのに時間はかかったみたいだが…」

「なんで俺らがこんな目に合わなきゃいけないんですか?」

「沼田君、今回の事件、恐らく誰かが意図的にやった殺人事件だ。誰か心当たりはいるかな?」

「殺人事件?…その犯人がわかったら俺の手で殺しますよ。」

柏木は沼田の肩に手を置いた。

「気持ちはわかるが…それで殺してしまったら君も殺人犯と同類になってしまう。犯人に罪を償わせるのは我々の仕事だ。誰か心当たりはないか?君を殺す動機を持った人間を」

沼田は首を横に振る。

「そうか…まぁ心当たりが見つかったらまた私に連絡してくれ。」

柏木は胸ポケットから自身の名刺を渡した。

「では私はこれで」

そう言い残し、柏木は病室を去っていった。

沼田は手渡された名刺を握りつぶした。

「犯人は必ず俺の手で…」

数日後、令和高校では沼田と立原の件で話題がもちきりだった。

黒崎の隣の席に座っていた矢部が黒崎に話しかけてきた。

「なぁ?知ってるか?3日前に立原と沼田が倒れた事件。」

黒崎は外の景色を見ながら、

「知らんな。」

「立原は死んだらしいけど、沼田は生きてたみたいだぜ。」

黒崎の手がピクっと動いた。

「そうか…立原は残念だが、沼田は助かってよかったな。今度お見舞いに行きたいんだが、沼田は今どの病院にいるんだ?」

矢部が不思議そうに聞いてくる

「あれ?黒崎って沼田と仲良かったっけ?」

「1年生の頃よく喋っていた仲だ。」

「へぇ。意外な組み合わせだな。沼田は高野総合病院ってとこに今入院してるらしいぜ。」

「そうか…助かった。」

その日の学校が終わり、黒崎は学校を出ると、高野総合病院に向かった。

「沼田生きてたんだ。」

ミルフィが話しかける。

「普通ならあれで確実に死ぬはず。奴は特異体質か?」

「恐らくね。特異体質の毒を分解するタイプだよ。それより、生きてると分かったらすぐ殺しに行くんだね。警察とかにバレないように時間を空けてからにするのかと思ったけど。」

ミルフィは黒崎に質問する。

「沼田が生き残っていたなら、奴は事件の証人だ。警察がこの事件が殺人事件だと気づけば、当然沼田に殺人犯に心当たりが無いか聞きに行くはずだ。そこで沼田が万が一俺の名前を出したらまずい。まぁ沼田は俺を騙していたことを俺に気付かれたと思ってないから、心当たりの中に俺が入る可能性は低いが…」

ミルフィはニヤニヤしながら、

「珍しく、焦ってるじゃん。」

黒崎は無視して、足早に病院へ向かった。

病院の近くに着くと、黒崎は足を止めた。

「ミルフィ、沼田が何号室にいるか確かめてきてくれ。」

「えー?またパシリ?殺すなら直接行けばいいじゃん。」

黒崎はため息をつく。

「お前馬鹿か?俺が直接面会しに行けば病院に記録が残るだろ。それを警察に見られたらまずいことぐらい分からないのか?」

「なんか透、最近私に当たり強くない?まぁいいけどさぁ」

渋々ミルフィは病院に入っていった。

ミルフィは黒崎以外の人には見えない為、誰にも見られずに沼田の病室がどこかを確認する。

ミルフィは病院内を歩き回って病室を確認していく。

「あ。いた。」

ミルフィは504号室にいる、沼田を発見した。

ミルフィは病院を出て黒崎の元へ戻った。

「透、確認してきたよ?」

ミルフィが黒崎に視線を写すとそこには、

黒崎と柏木が話している光景だった。

「君その制服、令和高校だよね?沼田くんのお見舞いに来たのかな?ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る