第6話命の清算

鬼頭との戦いから数日後の放課後…

「立原と沼田は今何しているの?」

とミルフィが尋ねる。

「奴らは今も付き合ってる。あいつらはよく放課後二人でカラオケにいく」

黒崎は学校から出ると、2人がよく利用するカラオケ店がある高田馬場に電車で向かった。

電車から降りてカラオケ店へ向かう道中、高田馬場駅の前の大通りを黒崎とミルフィは二人で歩いていく。

「まさかとは思うけどまた前みたいにフォースフレイムでカラオケ店をぶっ飛ばすつもり?」

「そんな事はしない。」

黒崎は表情ひとつ変えずに歩みを進めていく。

「じゃあどうするつもり?」

ミルフィに聞かれるも、黒崎は無視して進んでいく。

高田馬場駅から徒歩5分ほどのカラオケ店に到着した。カラオケ店の中に入り、店員に話しかけ、カラオケ室に案内される。

カラオケルームに案内される道中ミルフィは思わず「寒!エアコン効きすぎじゃない?」と身震いした。

一人でカラオケ室に入る(ミルフィも一緒)と、黒崎は無言のまま歌う訳でもなく、カラオケ室の換気扇を確認し始めた。

「ねぇ、せっかく来たんだし歌わないの?」

ミルフィが聞くも、黒崎は無視した。

「ねぇ酷くない?さっきから私の事ずっと無視してるけど!」

ミルフィが少し怒ると、黒崎が口を開いた。

「ここのカラオケルームは密室になっている。ここの換気扇から外の空調を入れ替えているんだ。そして、ここの換気扇はカラオケ店の裏路地の排気口と繋がってる。そして、恐らくここのカラオケ店排気口は複数あり、それぞれいくつかの室内の換気扇と繋がっている。」

ミルフィは「まさか…」

「今からどこの部屋と排気口が繋がってるか確認する。ミルフィ協力してくれるか?」

「えぇ?なんか最近私パシリにされてない?」

「スイーツ奢ってやる。」

「やりますやります!すぐやります!」

黒崎はカラオケ店の裏路地に行くと、複数の排気口の管があった。黒崎は それぞれ別の匂いがするお香を排気口の管の入口にそれぞれ置いた。

ミルフィは人に見えないという性質を活かし、それぞれの部屋の匂いを確認した。


「これでどこの部屋と排気口が繋がっているかわかった。」

「あのぉ、それでスイーツは?」

「ちょうど駅前にスイーツ店がある。そこで好きなのを買え。」

「わーい!」

黒崎とミルフィは駅前のスイーツ店に行き、黒崎はミルフィは高いスイーツを3つも買わされた。

黒崎とミルフィは駅前のベンチで二人で食べた。

「そういや、お前が持ってるスイーツ他の人からどんなふうに見えてるんだ?」

黒崎が質問すると、ミルフィが

「私が持ってるものも他の人間からは見えなくなるよ。」

「へぇ。」

冷たい声で返事を返すと、黒崎はそのままスイーツを口の中に入れる。

ミルフィはスイーツを頬張った。

「うーん!あまーい!スイーツだったら無限に食べられるよー。透もスイーツ好き?」

黒崎は下を向きながら、

「スイーツは好きじゃない。」

「えーこんなに甘いのにー」

黒崎は立原とよくスイーツ店に行っていた。

スイーツを見るとその時の記憶が蘇るのだ。

「そろそろ行くぞ。」

黒崎は立ち上がり、駅へ向かって歩き出した。

ミルフィは慌ててスイーツを持ちながら黒崎を追いかける。

「ちょっ私まだ食べ終わってないんですけどー!」

次の日の放課後、立原と沼田は例のカラオケ店へとむかった。

「あー涼しいわー外死ぬほど暑かったからなー」

「ね!カラオケ店内は涼しいわ。」

2人は受付に部屋を案内され、カラオケルームに入った。そのカラオケルームに入っていくのを見ていたものが1人いた。

黒崎は2人が入っていったカラオケルームの番号を確認すると、店の外に出て、裏路地にいく。

そこにある複数の排気口のうちの一つ、沼田達のいるカラオケルームと繋がってる排気口の前に立つと、

その人の手より一回り大きい排気口に手を入れ、

「フレアフレイム」

そのフレアフレイムは普段黒崎が使うフレアフレイムより圧倒的に小さかった。炎はカラオケルームに届かないだろう。黒崎はじっと手のひらに火が燃えてる手を排気口の中に手を突っ込んで置いておいた。

「人間は、気中濃度が3-6%で数分から数十分で頭痛やめまいを引き起こす。10%になれば、数分で意識が無くなり、放置すれば死に至る。そして、これは気中濃度30%8呼吸程すれば意識がなくなり、1分もしないうちに死に至る。」

カラオケルームの沼田と立原は過呼吸になる。

「ハァハァハァ」

すぐ意識が2人ともなくなった。しかし、運の良いことに、たまたま注文していたドリンクを運びに来たスタッフが目の前で2人が倒れたのをドアの窓越しに確認する。

「大丈夫ですか!?お客様!」

スタッフはドアを開けようとするもドアはビクともしなかった。

「あれ開かない!大丈夫ですか?」

スタッフはドアを激しく叩くも2人は動かない。


黒崎は万が一スタッフがその場に来てドアを開けてしまった場合、密閉空間が無くなり2人は助かってしまうことを見越していた。

「仮にスタッフがドアを開けようとしてもそのドアは開かないだろう。」

ミルフィが疑問に思う。

「え?なんでドアが動かないの?」

「気圧がカラオケルーム内と外では違うからだ。」

「あ。カラオケ店内めちゃくちゃ寒かった…」

フレアフレイムの熱い温度が排気口からカラオケルーム内に伝わりカラオケルーム内は物凄い高温となる。対してカラオケルームの外はエアコンが効いていて気温が低い為その気圧の差でドアが開かなくなるという仕組みだ。

「そろそろ騒がしくなってくる頃だ。」

黒崎はそう言い残すとその場を去っていった。

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