第2話初めての彼女との放課後
翌日を迎え、英会話の授業中に望月が当てられ、流暢に答えを発した。
黒板に視線を移し、英会話を担当する教諭を一瞥した。
教室内は一瞬だけだがざわつき、静けさを取り戻した。
教諭に当てられ、答えに詰まるクラスメイトも居たが隣の席のクラスメイトに助言してもらって答えていた。
英会話の授業も滞りなく終え、休憩時間を迎えた。
望月は教室の前側の出入り口から廊下へと出ていく。
俺は望月の姿を瞳だけで追うが、追いかけることなく机に視線を落とし、溜息を吐く。
「元気がないわね、中峰くん。どうしたの?」
「えっ?あぁー……友人に付き合わされてゲームしてて、夜更かしして」
「そうなの、ふぅ〜ん。それは迷惑ね」
「まぁ、そんな感じかな」
「じゃあ」
林田は片手を上げ、振りながら離れていった。
林田の傍に駆け寄る女子バレー部の嘉多畠の姿を見て、窓に視線を移し、見慣れた外の景色を眺める。
世界史の授業の用意を机の上に置いて、変わり映えしない一日を過ごしていく。
5限目の授業を終えると休憩時間を迎え、隣に望月が佇んだまま、俺に視線を注視させながら、囁くようなか細い声を発した。
「中峰くん……放課後、なにもない?」
「あぅっ……ああうん」
「放課後に。また」
「あぁ、分かっ——」
俺の返答も聞かず、彼女は自身の席へと戻っていく。
放課後を迎え、帰り支度を済ませ、通学鞄を机の上に置いて彼女が再び声を掛けてくるのを待つ俺だった。
3分待っても望月は声を掛けてこない。
俺は椅子から腰を上げ、立ち上がり通学鞄を肩に提げ、彼女が椅子に座ったままの元へ歩み寄った。
「望月さん、さっきのは——」
俺の言葉を遮って勢い良く頭を上げ、謝罪して立ち上がった彼女。
「ごめん、なさい……緊張して、近寄れなかった。あの——」
彼女が述べるには、隣街に出来た洋菓子店の個数制限があるケーキを食べたくて声を掛けてきた、とのことだった。
「良いですよ。行きましょうか」
「ありがとう、ございます」
俺は彼女の隣を歩き、廊下を出ていく。
彼女と会話を交わせたのに、不思議な感覚を味わった。
自転車を駅の駐輪場まで運んでから、電車に乗車して二駅乗って、降車して、10分後に洋菓子店に到着した。
望月が先に入店し、俺も入店し二人並んで、個数制限があるケーキを二人分と大ぶりなシュークリームとカスタードプリンを購入した。
店内で食べることになり、円形のテーブルで向かい合いケーキをふた切れを前に興奮している彼女とシュークリームとカスタードプリンを前に並べた俺だった。
彼女はフォークでひときれを四口で食べ終え、カップのアールグレイを啜り、感謝を述べた。
「中峰くん、今日はありがとうございました。どうしても気になって……頼れる人が居なくて、中峰くんなら平気かなと……」
「どういたしまして。無害認定されたのは喜ばしいな」
彼女がふた切れ目に入って15分経って、トレーを返却口に返し、洋菓子店を出て、そのまま望月とは別れた。
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