幕間01_アイシャ、祈りの先に
(作者補足)
EmberFlight 第一章後、第二章開始前の幕間となるアイシャにフォーカスした短編、「ジャパニーズドリーム~灰と残響の向こう側~」を短編として公開しました。が、ChatGPT5との合作で仕上げた短編版に今一つ思い描いていたものと違うので、当初ChatGPT4oと合作した4話構成の「幕間」バージョンを続けて公開します。
4話構成です。
仕上げに若干違和感があるかもしれませんが、今回はそのテイスト(モデル差)を尊重したかったので敢えて私の手による仕上げは控えめにしていますのであしからずご了承ください。
それでは、以下が本編となります。
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アイシャが「アフガンの現実」に本格的に向き合ったのは、中学生も半ばを過ぎたころだった。
母から語られる「祈りと家族の物語」、父が遠くで語る国際ニュース、そして自分の手で開いた歴史書やネットの無数の論考――
彼女の頭の中にあったアフガン像は、少しずつ現実の“重み”を持ち始めていった。
アフガニスタン――1970年代末、
王 政崩壊後の社会主義政権(PDPA)は、国内の伝統社会と激しく衝突。
1979年12月、ソ連(当時のソビエト連邦)は“兄弟社会主義国家の支援”を名目に、10万人規模でアフガンに軍事侵攻した。
都市では共産化・近代化、農村ではムジャヒディーン(イスラム戦士)の反乱。
米国・中国・パキスタン等はムジャヒディーンを陰で支援し、“代理戦争”の地となった。
「祈り」と「戦争」がアフガン社会の“日常”となる。
母の語る“誇り高き村”の思い出の裏で、国土はソ連の爆撃と地雷、スパイの粛清に引き裂かれていた。
10年に及ぶ戦闘はソ連の“ベトナム”と化し、
1989年の撤退後も、アフガンは「統治なき権力闘争」に陥った。
首都カブールですら、武装勢力同士のロケット砲戦が続き、
国土の半数は難民――「母が見た村」は、難民キャンプでの記憶にすり替わっていく。
混乱のなかで頭角を現したのがタリバーン。
パキスタン難民キャンプ出身の青年たちが「シャリーア(イスラム法)による統治」を掲げ、厭戦気分の市民に“秩序”を提示しながら、1996年カブールを制圧。
旧政権=北部同盟勢力(少数民族中心)は北部山岳地帯に追いやられた。
母の時代の“帰属意識”は、ここで“国家の消失”“宗教=救済幻想”に二分される。
タリバーンは女性の教育・労働参加を徹底排除した。ブルカ義務化、音楽・映画・芸術の禁止。
一方で地域による差異が大きく、農村の一部では“戦争なき日常”が戻った。
2001年9月11日、NY同時多発テロ。
タリバーンがビンラディンらアルカイダの庇護者と見なされ、米軍を中心とする多国籍軍がアフガンに侵攻、「反テロ戦争」の舞台となった。
小康状態にあった国土は激変し、「テロ国家」「自由化と近代化」という2つのイメージが並存。
旧タリバーン政権は崩壊、新政府(カルザイ政権)は国際支援のもと成立。
都市部では女性教育や市民活動が復活したが、一方で地方や農村は「外国軍の駐留」「ドローン攻撃」「腐敗」「新たな内戦」に疲弊し続けた。
2050年代以降、米・露・中の大国はアフガンから“手を引く”戦略を本格化。
リチウムなど資源争奪の熱も冷め、“戦略的コスト”は“見返り”を大きく上回り、国際情勢の真空地帯へ。
国際社会の関心は火星・宇宙・AIに移り、「アフガンは“混沌とした独立国家”のまま周辺圏に残される」。
アイシャがニュースサイトに目を走らせると、「アフガニスタンは今も民主化と伝統の間で揺れている」「国連の教育支援は縮小し、難民の多くが“無国籍化”した」といった記事が散発的に表れた。
“祈り”も“国家”も、“どこにも完全には居場所がない”まま世代を重ねてしまった。
そんな母の記憶のアフガンは“幻想のふるさと”であり、現実のアフガンは「介入されなくなった孤立圏」でしかない。
ソ連の圧政下で「祈り=抵抗」の時代。
タリバーン時代の「祈り=権威/抑圧」。
戦後の民主化運動では「祈り=希望/近代との対話」。
アフガニスタン――母の国。
それはソ連に蹂躙され、戦争に疲れ、タリバーンに抑圧され、そして今も迷い続けている国。
どの時代にも、祈りと暴力と孤独があった。
私はもうそこに帰れない。けれど、その歴史を知ることでしか、自分がどこから来たのかを知ることはできない。
だから私は今日も詩を書く。祈りでも祖国でもなく、“私だけの場所”を作るために。
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