第47話 都会の都市ダンジョン⑤ぴかぴか光るドラゴンが来ました
一部のダンジョンではボスと呼ばれるモンスターが存在する。通常、ボスは特定の階層の特定の場所にいて、冒険者を悠々と待ち受ける。
なので、普通のボスは冒険者が準備を整えてから挑める。
しかし、ボスの中にはダンジョン内を自由にさまよい、気ままに冒険者を襲うタイプのボスがいる。こういったボスは徘徊型ボスとか、彷徨型ボスと呼ばれる。
遭遇したら突発的にボス戦が始まる。準備もなく始まるため、厳しい戦いを強いられる。
「逃げることは可能か? ボスは準備もなしに戦っていい相手じゃないぞ」
突発的なボス戦はパーティが崩壊する危険がある。避けられるのなら、避けたい。いや、避けるべき戦闘だ。
「馬鹿を言うな、愚か者。もう補足されてる。逃げようものなら、地獄の底まで追って来るぞ」
月城に逃走可能か聞くも、返答は無常だった。もう、闘争するしかないようだ。
補足はされているが、まだまだ距離は遠い。ボスに襲われるまで時間はある。
「で、あのボスはどんなモンスターなんだ?」
「まだ、よく見えないがここで出てくるボスといったら、データサイエンスゲーミングドラゴン(DSGD)だろうな」
鉄の街の空の向こうから、飛来するボスモンスターのドラゴン。その体表はぴかぴかと明滅している。
まるでゲーミングパソコンのようにキラキラと無数の色に輝いている。故にゲーミングドラゴンと呼ばれる。
「それは、どんなモンスターなのかな?」
徘徊型ボスと出会うのはかなり稀なこと。何度も都会の都市ダンジョンに潜っている止木もDSGDのことは知らないらしい。
「データサイエンスゲーミングドラゴンで、一番気を付けなければいけないのは、長く戦うことだ。あれは、戦いながら冒険者のデータを集めて、分析を行うんだ。解析が進むと冒険者の動きや癖、スキルを解析される。すべての行動が読まれるようになるから、分析が完了する前に倒さないといけない。分析が終わったら、絶対に勝てなくなる。ドラゴンの目が光ったら、スキル使用中の合図だ。見逃さないように」
DSGDは冒険者を解析するスキルを持っている。その名も【エクスプローラーアナライズ】。このスキルが完了すると、冒険者のデータが分析され、DSGDの行動が最適化される。
ただし、一度や二度のスキルで冒険者が負けるようなことにはならないが、行動が読まれるので苦戦を強いられる。スキルを中断させるのが最優先事項だ。
冒険者のデータを分析する。故にデータサイエンスと呼ばれる。
ぴかぴかと光り輝く体表、冒険者を分析するスキル、二つの特徴合わせてデータサイエンスゲーミングドラゴン。ふざけた名前だが、ボスに相応しい強力無比なモンスターである。
「だから、【エクスプローラーアナライズ】は最優先で邪魔するように。あとは……ちっ、時間切れか。DSGDのスキルについては適宜教える。今は戦闘準備が優先だ」
「はーい。輪ちゃん、私たちなら大丈夫だからね。絶対に勝てるよ」
「止木の言うとおりだ。華鳥楓月は無敵だ」
「ふん、ここで死ぬつもりはない。データサイエンスゲーミングドラゴンとやら、さっさと倒すぞ」
「……お前ら。ああ、そうだな。勝つぞ。俺たちなら負けない! 咲華、まずは機先を制すぞ。スキルの準備だ」
DSGDが目前まで迫っている。戦闘開始まで秒読み。
先制攻撃をするため、止木がスキルの準備を始める。
「来た、今だ」
「うん。スキル【雷鳴穿孔】」
雷鳴の力を一点に集中して、すべてを貫くスキル。雷が轟轟と鳴り響き、一筋の線がDSGDの喉元を襲う。
「グォォォ」
先制攻撃が成功し、DSGDに大ダメージを与える。しかし、全体力からすれば微々たるもの。当然だが倒すには至らないし、気にしている様子もない。
DSGDは地面に着地し、鋭い爪を何度も振るう。ドラゴンの攻撃はすべてが必殺の一撃だ。掠っただけでも命取りになる。
暴れまわるDSGDは危険だ。そのため、華鳥楓月の全員がDSGDから距離を取る。
だがそれは、DSGDの狡猾な作戦だった。
「ヤバい、【エクスプローラーアナライズ】だ」
DSGDの目が光り輝く。これこそ【エクスプローラーアナライズ】が発動している証拠だ。
DSGDは爪を振り回すことで、近くから冒険者を遠ざけ、その隙にスキルを使用した。もし、【エクスプローラーアナライズ】のことを知らなければ、いきなり冒険者の解析を成功させてしまうだろう。
「任せな【ペネトレイトショット】【ペネトレイトショット】【ペネトレイトショット】」
神倉が強力な一矢を三連続で放つ。解析中は少しの間、無防備になり、まったく動かなくなる。知っていれば、攻撃し放題のチャンスタイムだ。
三本の矢は正確にDSGDの目に突き刺さる。
いかに光り輝く鱗に覆われているドラゴンといえど、目までは守られていない。矢が突き刺さり、出血を促す。
痛みにのたうち回るDSGDは思わず【エクスプローラーアナライズ】を中断する。
「ガルルルル!」
スキルを中断させられたDSGDは怒り心頭。華鳥楓月の面々を血を流した目で睨みつける。
「おいおい、ドラゴンさん怒ってんじゃないの? これでよかったのか?」
「仕方ないだろ。【エクスプローラーアナライズ】を成功させられることに比べたら、百倍マシだ」
【エクスプローラーアナライズ】は絶対に止めなければならない。たとえ、DSGDを怒らせる結果になったとしてもだ。
怒るだけなら勝ち筋はが消えないが、【エクスプローラーアナライズ】を成功させられると勝ち筋が一気にか細くなる。何が何でも止める必要がある。優先順位を履き違えてはいけない。
「はあああっ!」
暴れ狂うドラゴンの猛攻を掻い潜り、止木が攻撃を繰り出す。一撃でも食らえば大ダメージを受ける攻撃をものともせず、一方的に攻撃を食わる。上級の冒険者は一味も二味も違う。
「咲華にばかり任せてられん。続くぞ」
「おうさ」
「ふん、当たり前だろ。もっと働け」
蘇鳥が止木に続いてDSGDに近づいて攻撃を食わえる。止木ほどDSGDの攻撃を優雅に避けることはできないので、距離を取り、安全を確保しながら攻撃する。
止木がヘイトを取っているので神倉はフリー。自由に弓で遠距離攻撃をする。
月城は直接戦闘に参加することはないが、仲間のサポートをしたり、DSGDの攻撃力や防御力を下げて戦闘に協力する。
「せーーーいっ! 【破断】」
「グググ」
止木の強力な一撃がDSGDにお見舞いする。DSGDは思わずよろける。
止木が鬱陶しかったのか、それとも華鳥楓月の面々が鬱陶しかったのか、DSGDの目が細められる。尻尾を振り回し、近くにいる冒険者から排除する。
「ーーやべ。……がぁぁっ」
急に振り回された尻尾に対応できず、蘇鳥が吹き飛ばされる。間一髪で盾でのガードが間に合ったが、鉄の建物に叩きつけられ大ダメージを負う。
「輪ちゃん!?」
「蘇鳥、無事か?」
「何やってんだよバカが、油断するんじゃねぇ」
TIPS
データサイエンスゲーミングドラゴン
冒険者のデータを分析して、戦うピカピカ光るドラゴン。鱗には数式やグラフが細かく刻まれている。
戦闘時間が長引くほど、冒険者側が不利になる。速攻で倒さないと厳しい。ダンジョン徘徊型のボスモンスター。
ドラゴンにデータを与えるなかれ。
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