第2話 相手にとってはホラー
「今日は此処で野営にするか」
「開けてるし丁度良いな」
(……そんな事ある?)
死体である俺を見つけてくれる救世主が現れたっ! と思ったし、実際に俺の視界内にまで来てくれた。……が、その人達は俺の目の前で火を焚いてテントみたいなのを建てて如何にも此処で一夜を過ごしますと言った環境を作り出した。……俺に気付かずに。
再度言おう。そんな事ある? だって俺白骨死体だよ? 自然の中で白骨なんて滅茶苦茶目立つでしょ。もしかして俺の身体って既に無くなって居て霊体だったりします? だとしたらさっきのウサギは何を齧ってたんだよ。
ま、まぁ良い……久方振りの人の会話だ。気付かないなら気付かないで人の声を存分に堪能しようじゃないか。……野郎の声なのが残念だけども贅沢は言えない。だって死んでるし。
「そいや今日の収穫は?」
「ラビット三匹にスネーク一匹。俺達にとっては大収穫だなっ!」
「あぁ、やっぱこの森は動物系が多くて良いな。わざわざ危険な西の森に行かなくて良いし」
「そうそう。此処らへんで出る脅威と言えばベアくらいか?」
ん? コイツらもしかして狩猟組合とかの人なのか? ウサギとかヘビって勝手に狩って良いのかな……
よく見ればなんか腰に剣みたいなの刺しているし、なんか返り血みたいなのついてるし……もしかしてヤバい人だったりするのか?
「んじゃ、今夜のお楽しみである——」
「ステータス閲覧だなっ!」
「おう! んじゃ早速……」
「ステータスオープンっ!」
(!?)
なんだあれ……男達の目の前に半透明な板が現れたぞ? えっ、現代の技術ってそこまで進んでたの? いや……それにしては投影する機械みたいなのが無いし違うな。
アイツら、【ステータス】って言ってなか——
『ヴォンッ!』
(……え?)
思考の中でステータスって呟いた途端に目の前に半透明な板が現れた。なんだコレ……ラノベみたいだな。
—————
種族:カラ骨
名前:無し
進化:0
レベル:1
【基礎ステータス】
攻撃:5 防御:7
魔攻:1 魔防:2
敏捷:10
【スキル】
・拳骨 ・納骨
【耐性】
・痛覚耐性 ・恐怖耐性
—————
出て来たステータスはコレ。マジでラノベとかゲームで出て来そうな見た目をしている。
他に見れそうな項目とか……無いな。コレだけしか見れないっぽい。
「お前っ! 加速のスキル芽生えてるじゃん!」
「お前だって刺突のスキルあるじゃんか!」
視界に映る男2人は何やらスキル関連で盛り上がっている。俺のスキルは……【拳骨】? 拳骨ってアレか? 昭和の親父が子供を叱る時に脳天に落とす拳の事……今の時代じゃ世間が許さないタイプの教育の奴。
それと【納骨】て……自分自身の骨を墓にでも収めるんか?
「コレでもっと上を目指せるっ!」
「あぁっ! 目指せミスリルランク!」
「馬鹿! そこは無理でもオリハルコンランクって言う物だろうが!」
「そうだなっ! 目指せオリハルコンランク!」
「「あっはっはっはっは!!!」」
……元気だなアイツら。と言うかそろそろ気付いてくれても良くない? 俺ってばこの光半透明な板も出してるんだぞ?
「……? ん? おい、アレって……」
「おん? あー、死体……だな。こんな浅い所でもあるんだなぁ。一歩間違えれば俺らもああなると思うと……」
「あぁ、ゾッとするな」
ようやく俺の事に気付いたらしい男達は俺の元まで来て、俺の白骨と化した手を取った。
「死んでからかなり経ってる……よな?」
「多分な。周りに服も落ちてないし、物は……埋まってるのか?」
「冒険者証は? アレって特殊な加工されてる筈だし」
「無いな」
「あー、なら報告する義務も無いな。漁るだけ漁るか」
ん? 報告する義務が無い? 漁る? 何を言ってるんだコイツらは。と言うか半透明な板ってコイツらに見えてない……?
とかなんとか思ってるうちに俺の身体をゴソゴソと弄り始めた。
骨となった俺の身体は随分と軽いらしく、簡単にどかされて俺の死体があった下部分を腰に刺していた剣で掘り出した。
「なんだコレ、金属の板?」
「まぁ多少なりとも金にはなるだろ」
「だな」
「お? これは……ってなんだ、留め具じゃねぇか。錆び付いてるしガラクタだな」
「ふーん。なんかシケてるな」
「どうせ何処かの農村生まれだろ」
そう言って金属の板……俺のスマホを手に持って立ち去ろうとする男達。
(ま、待てっ! いくら俺が死んでるとは言え死体漁りは違うだろ!)
そう思って俺は咄嗟に片方の男の腕を掴もうとした。身体なんて動く筈無いのに。そう、動くなんて事……有り得ないはずなのに。
『ガシッ!』
「へ?」
「ん? どうし、た……?」
身体が……白骨となった腕が動き、スマホを持って居た方の男の腕をしっかりと掴んでいた。
「…………」
(…………)
その事実に三者同様に固まる。そして——
「うああぁぁぁぁああああ!!!」
「死体が動いたぁぁぁああああ!!!」
(えっ、動いた⁉︎ なんで⁉︎)
男達は夜と言うこともあって死体が動いた恐怖を強く感じ、スマホを放り投げて何処かへと走り去ってしまった。……が、今はそれはどうでも良い。俺は動いた白骨の手を見てみる。
(う、動く……死んだばかりの頃に何度試しても動かなかった手が動くっ!)
手を握ったり、開いたり。それが出来るだけでも滅茶苦茶な感動がある。……すげぇ、身体を動かせるってこんな感動する事だったんだ。
試しに頭を動かせば、動く。視界を確保できた。
足も、足の指が動けているのが確認出来た。て事は——っ!
(動く! 動けるっ! 凄い凄い凄いっ! まさか自分自身の意思でまた動けるようになるなんてっ!)
理由は知らない。けれども動ける事には変わりないのだ。身体に絡まってた蔓を何とか退かし、まず触れたのはあの男達が持って行こうとしたスマホ。……現代っ子だからな。やっぱりスマホは触っていた方が落ち着く。
とりあえず画面を二回タップしてみると……画面が点いた。凄いな、このスマホ。まさかまだ機能が生きているなんて。念の為と思ってジップロックに入れておいたからなのかな。
あとなんで骨に反応してるんだこのスマホ。骨に生体電流云々とかって存在してるのか?
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