ウンディネ沢魔法工務店
木船田ヒロマル
晴天の霹靂
「キャンセル!? 工区全部を!? 今!?」
ウンディネ
「そうだ。工事はキャンセル。構造物は全て解体して
「理由をお聞かせ願いたい!
これは王国から頂いた正式な公共事業で、……ほら、こちらの
「
侯爵閣下の取り巻きの一人が、明らかに
「そりゃ、理由の説明になっとりゃせん」
まだ若い店主を
「期日まであと十一日。工程は最後の
「なんだァア? 小娘ェエ?」
「良い。特別に答えてやろう耳長のチビ女」
「お前たちがここ一ヵ月作業して汚い石壁を積み上げたこのバインツェルマンシェルの森はな、我々銀翼騎士団のテリトリーであり、その
エルフの少女は答えなかったが、その手にはいつのまにか小さな
「いけませんアルビエッタさん!」
今度は太った中年の
「こやつら話にならん。永遠に石にして埋めた方が世の中のためじゃ」
「そりゃそうかもですが、おっと失礼。相手は仮にも騎士団長の侯爵閣下ですよ! ここは私が話しますのでご
「ふん。始祖エルフに誓って言うが
「誰だ貴様は」
エッケルはあからさまに
「申し遅れました。私は神の恵みと図書の教会の僧侶にして、現在はこちらウンディネ沢魔法工務店で作業計画と
ふははっ、と侯爵は
「
「
さて閣下。閣下のおっしゃる通り、我らウンディネ沢魔法工務店の面々は、王国より正式の公共事業を
「知らん。それはそちらの都合だ。積み上げるより壊すのは簡単だろう。お得意の魔法でなんとかしたら良かろう」
ゲラゲラと貴族の子息だろう騎士たちから
「今ひとつ。
今期の
「魔物ワタリからの、国家の防衛であろう。恐れ多くもその一旦を担う銀翼騎士団の長たる私が、それを知らないとでも思ったか無礼者め‼︎」
エッケル騎士団長は本当に
魔物ワタリとは、この世界の魔物たちの珍しい習性の一つである。
数年に一度、あるいは数十年に一度、魔物たちが
「これは失礼を。
「くどいっ‼︎」
エッケルは
「
取り巻きたちも次々と
工務店の面々と作業していた人足たちは
「ほれ見ろ。言わんことじゃあない」
エルフの少女が
「……分かりました」
ラクサスは
「工事の中止、構造物及び資材の全撤去。確かに
「ラクサス殿……」
太った僧侶が悲しげに呼びかける。
「良いのです
そのやり取りを聞いたエッケルは鼻で笑った。
(
「アルビエッタさんも。ここは
「
エルフの少女はフードを
「エルンスト
ラクサスがそう言うといつの間に用意したものか、書き板に
それは簡単な内容だった。
〜 ウンディネ沢魔法工務店に発注された王国外縁防御壁の契約を全て無効とし、関連構造物、廃材、資材の全撤去を命ずる。
キャンセル料は払わず、この命令の結果生じた全ての出来事についての責任は命じた私が負うものとする 〜
「生意気な」
「怖いですか? 魔物のワタリがここに来るのが」
「ふざけるなよ!」
エッケルは
手を止めて、ことの成り行きを見守っていた
「これで
エッケルは
「いいザマだな!
がははは、とエッケルの笑い声が響き、ゲラゲラと取り巻きたちの
ラクサスたちを
「大丈夫ですか?」
「ええ。ありがとう、司教」
ラクサスは立ち上がり、ローブの土を払うと、エッケルが残していった
「……ご
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