第25話 緊急会議

「――以上が、西の森で確認した異常よ」

《暁の翼》会議室に、マリアの声が響いた。


報告を終えると同時に場の空気はさらに張りつめる。

机を囲む仲間たちは息をひそめ、オルグとセリアの視線が交錯する。


「……ただの群れの暴走ではないな」

オルグが腕を組み、低く唸った。


「……数は正確には掴めてない。でも群れの動きと速さに角から溢れていた魔力の脈動――あれは普通じゃない。

あのまま拡大すれば、都市の防衛線じゃ抑えきれないかもしれない」

マリアが補足し、会議室に冷たい現実を落とす。


そんななか――『バン!』

勢いよく扉が開いた。


「だったら私たちが先行して――!」

カレンが息を切らせて飛び込むように叫ぶ。


彼女は本来、Dランクゆえに会議の席に呼ばれてはいなかった。

それでも廊下で耳を澄ませていたのだろう、衝動を抑えきれずに。


場の空気が一瞬だけ張り詰める。

「……やっぱり我慢できなかったのね」

セリアは額に手を当て、小さく苦笑した。


「落ち着け、カレン」

オルグが片手を上げて制し、深く息を吐く。

「動くにしても戦力配分を考えねぇと、守りがガラ空きになる」


セリアは短く目を閉じ、頷いた。

「……オルグの言う通り。今は突出するよりも、全体の守りを整えることが先決よ」


対策を練ろうとした、その時――

『ガチャァン!』

再び扉が乱暴に開かれる。


「オルグ!」

現れたのは王国騎士団長ガルディウス。

その背後には、緊急事態を知らせる赤い印旗を掲げた副官が続く。


「王命だ、王城にて緊急会議が開かれる。冒険者ギルド各所にも召集がかかっている」

低く抑えた声だが、焦りが隠せない。


「ギルドの指揮は私が引き継ぐわ」

セリアが副ギルドマスターとして冷静に告げ、場を支える。


「……わかった」

オルグは立ち上がり、灰色の瞳を細めた。


扉へ向かおうとしたそのとき

「待って」

マリアが一歩前に出た。


「報告者の私が同行しなきゃ、意味ないでしょ」

その瞳は揺るぎなく、父を真っ直ぐに見据えている。


オルグは短く息を吐き、わずかに口元を緩めた。

「……しゃあねぇな、勝手はするなよ」


「わかってる」

マリアは杖を握りしめた。


ガルディウスは渋い顔をしつつも、反対はしない。

「ならば急げ、王城ではすでに各ギルドの代表が集まりつつある」


会議室の空気が一斉に動き出す。

王城に集う各ギルド――そこから、都市を揺るがす大集結が始まろうとしていた。

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