第4話 女子高生のわたし、戦艦の艦長に… ④
あ、れ?
ここは?
わたし、確か戦艦のブリッジで…
意識を取り戻したわたし。
ベッドの上で、眠ってた?
なんか、重みが…
ボーッとする頭で見てみると、足元のベッドの端にヒメカが腰掛け、何かスティック状のお菓子を食べている。
わたしが意識を取り戻したのに気づいたのか手をひらひらさせてる。
いや、そこは口の中のもの飲み込んでから声掛けなさいよ!全く、この娘はッ!
小さい頃から全ての行動においての最優先事項が『食べる事』ってなんなのよ!
幼馴染が絶賛気絶?してたってのにぃッ!!
「よかった、良かったよぅ〜。エリィシアさんまで他の方達みたいになってしまったと思ったら、先生、先生!親御さんに顔向けできなくなっちゃうところだったのよぉぉぉぉ〜」
わたしが意識を取り戻したのに気がついたナギサ先生が、わたしに抱きついてきて大泣き。
「と、特に!特にッ!!エリィシアさんは!何かあったら先生、首チョンパになっちゃうからっ!」
あ、うん。心配かけて、ゴメンナサイ…
天照重工の重役の一人娘で、何かゴメンナサイ…
極限状態なのか、ちょっぴりズレてるわね、ナギサちゃん…
コホン
咳払い。白衣を纏った男性、あのダンディなオジサマが声をかけてる。
「気がついて何よりだ。さて、こんな状況だが、とりあえず挨拶といこうか?はじめまして。医師のウイリアム・ハーバードだ。よろしく。」
あ、お医者様だったんだ…
やっぱり、何か…
ス・テ・キ♡
「あ、エリィシア・ノイマンです。あの、ありがとうございます」
わたしの返答に頷くドクター。
ヒメカも、ナギサ先生もドクターに改めて挨拶してる。
「さて、検査の結果、キミのバイタル、脳波等に影響は見られない。ブリッジであれだけの戦いをこなした後とは思えんがね。それから、診断としては極度の緊張状態から解き放たれて肉体的疲労、心的疲労が限界を超えた為と思われる。少し水分を取れば問題ないだろう」
ドクターは紙コップに入った、経口補水液をわたしてくれる。
経口補水液の独特の塩味が生きてると実感させる。
とりあえず診断を聞いて一安心。
「あれ?ところで誰がわたしをヒメカは絶望的に非力だから無理だと思うし、あのホログラムの娘?」
チラッとヒメカを見ると
『当然、私じゃありませんっ(ドヤッ)!』
ってなってる。
うん、そこドヤるところじゃないけど、知ってる。
それを聞いたドクターは、
「ああ。ブリッジからキミを運んだのは彼女だ。落ち着いたらお礼でも言っておき給えよ」
壁に寄りかかる孫麗玲に視線を送るドクター。
え?
わたしが視線を送ると、壁に寄りかかってお酒飲んでる、孫麗玲さんが。
わたしの視線に気付いたのか「チッ!」と舌打ちしてそっぽを向いてしまう。
ここでも、飲んでるし…医務室よ、ここ…
それにしても、そっぽ向いちゃったけど、もしかして、照れ隠しなのかな?
ちょっぴり、カワイイ。まだ少し恐いけど…
でも、この人がいなかったら、やられてたかと思うと、やっぱりキチンとお礼は言わないといけないよね?
落ち着いたら勇気を出して声をかけよう。
ベッドから上半身を起こしたところで、周囲に光の粒子が集まり、人の形を作る。
「お目覚めですか?マスター。ご無事でよかった」
あの、AI美少女、アリスが現れた。
一度見ているわたしはなんともないけどドクターとナギサ先生は少し驚いていたな。
「改めまして、ワタシはアリス・エスネア・スカーサハ。製作者により『イルダーナ』と名付けられたこの艦の管理AIであり、アバターです。『マグ・トゥレド』の阻止のため、56億7000万日の時間凍結保護処理から復帰しました」
???
ナニヲイッテイルノカ、サッパリワカリマセンヨ。アリスチャン…
「疑問に思う事、多々あるかと思います。ワタシにお答えできる権利のある事は全てお答えします。なんなりとご質問を」
こうして、わたし達からのアリスへの質問タイムが始まるのでした…
「え~っと、先ず、あなたとの事と、さっきからよく口にする『イルダーナ』ってなに?」
そう、彼女が現れてから良く口にする単語が『イルダーナ』だ。口ぶりからするとこの戦艦の名前みたいだけど…
「はい。この艦は製作者達により、イルダーナというコードネームが与えられています。ワタシは、この艦の管理AIです。艦内の状況を常に把握、確認し、不具合の修正や自動航行などの制御も行っています。皆様に安心して過ごしていただけるように努めております。
現在、完全にシステムが復旧していませんが、生活面では不自由なくお過ごしいただけるようにしております。
この艦は超長期航行も想定されておりますので、居住スペースも整っており、スペース内の食堂スペースにおいての食料品等の供給に関しても完全なシステムが構築されておりますのでご心配なく。なお、製作者により、居住スペースは『ティルナノグ』、食料供給システムは『ダグザ』と名付けられています。
恐れ入ります。皆様のお持ちの端末をスキャンさせていただきました。イルダーナのシステムを、一部リンクさせました。メッセージアプリや通話機能、イルダーナのデータベースから可能な範囲の情報検索、『ダグザ』への遠隔注文等も可能になっております」
待って!待って!!待って!!!
いきなり情報量多いからっ!
とりあえず、まとめると…
やっぱり、『イルダーナ』というのはこの戦艦の名前。
アリスは、この戦艦の管理AIであること。
とりあえず、食料や住居の心配はないこと。
わたし達のスマホはある程度は使えるということ。
「はい。その通りでございます」
なるほど。
「あ、そうだ!何であなたが出てくる時、光があつまるの?」
ブリッジでも医務室でも同じ様な現象だったし、アレってなんなんだろう?
「はい。アレは、艦内に散布されている特殊なナノマシンを媒介にワタシがアバターとして顕現する際の発光現象です。なお、ナノマシンに関しては人体には何の害もありませんのでご安心を。皆様の言葉で言うと、『ワタシ何処にでも投映出来る、動くホログラム』と言ったところですね。ですが、ホログラム故に物理的介入は不可能ですので、そこはご容赦を」
なるほど。やっぱりアリスは『動くホログラム』なのね?良く出来てるなあ〜。かなり高度は技術な気がする。
「じゃ、じゃあ、あの気持ち悪い蟲はなに?」
そう、一番気になるところ。いきなり襲ってきた蟲達。アレは一体なんなの?
「あれらは『混沌蟲』と名付けられています。全ての知的生命体に対しての天敵とも呼べる存在。有機物、無機物に限らず全てを捕食します。
まだメモリーの復旧が不完全でこの程度の情報しかご提供できないことをお許し下さい」
混沌蟲…
聞くだけでヤバイシロモノだとわかる響きね。
「そ、それから…シャトル!わたし達の乗ってたシャトルはっ!?」
「皆様が乗っていたシャトル『アークェット号』は残念ながら蟲達にその乗客共々捕食されてしまいました。生存者は皆様を含め、この艦に転移された103名の方々だけです。」
うっ…
分かってはいたけど衝撃の事実。
ナギサ先生やドクターもショックを受けてる感じ…
「じゃ、じゃあ!なんでわたし達だけイルダーナに来れたの?」
確かに疑問。同じ空間にいてどうしてわたし達103人だけが?
「はい。それは『リア・ファル』の守護によるものです。また、『リア・ファル』はこのイルダーナを起動させるためのキーとなっています。」
わたしがキョトンとしていると、アリスは続ける
「『リア・ファル』の機能の1つとしては、今も申したとおり、イルダーナ起動キーと呼べるアイテムです。『リア・ファル』には所持者の生体データ等が自動的に登録、随時更新されており、他者への譲渡、貸与は不可となっております。
また、『リア・ファル』には『所持者を危機から守る機能』があります。例えば、少しの時間でしたら宇宙空間に生身で滞在することも可能ですし、ある程度の衝撃からの保護も行なっています。
それから、他の方々がイルダーナに転移してきたのも『リア・ファル』の保護範囲内にたまたま居たから、ということが推測されます。
なお、『リア・ファル』がどの様に、作られたかはワタシに回答権限が有りませんのでお答え出来かねます。」
待って!待って!!
わたし、『リア・ファル』なんてもの持ってないんだけど?
「お持ちですよ?首から下げられているペンダントの先についている宝石の様な石がまさしく『リア・ファル』です」
え?
えっ??
えっっっ???
こ、これ?
わたしの宝物のこのペンダントが、『リア・ファル』?
わたしのペンダントが、みんなを護った…?
違う…
待って…
あの光は、わたしのペンダントから始まった。
あの光が、わたし達をここに連れてきた?
じゃあ…もし、わたしがこのシャトルに乗っていなかったら?
わたしのペンダントが、光ったりしなければ…?
みんなは…今も、普通に、地球に帰れてた…?
これって…
わたしの、せい…?
わたしの、ペンダントがみんなを巻き…込んだ?
蟲に食べられちゃった人達は、わたしのせいで、
食べ…
ら……
れ………
た…………?
ぐるぐると回る負の思考…
「ちょ、ちょっとゴメンナサイっ!」
わたしは居た堪れなくなって医務室を飛び出してしまったのでした。
【作者より】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
物語は、まだまだ始まったばかりです。
次回の更新は、8月27日(水)21時を予定しております。
エリィたちの次なる運命を、どうぞお見逃しなく!
もしよろしければ、フォローや応援も、よろしくお願いいたします!
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