リアル話 現在進行形 裏切りと借金地獄 元社長の転落と再起

@sikuhakku717

第1話 鎖 覚悟 裏切り 無職からの経営 ノンフィクション


これはノンフィクションです。

途中からリアルタイムになります。


第1話 元社長、いきなり無職になる


「明日から来なくていい」


その言葉が落ちた瞬間、会議室の空気が変わった。

ドラマの悪役が吐き捨てるような台詞を、まさか自分が現実で真正面から受けるとは思わなかった。


夕方、長机を挟んで座る現社長と、その隣に腕を組む孫。

さらに弁護士と税理士、古参役員が二人。

合計六人が、まるで判決を下すために集まった陪審員のようにこちらを囲んでいた。


ガラス窓の向こうでは、夏の湿った風がカーテンをわずかに揺らしている。

遠くの街灯がぼんやりと滲み、沈みかけた夕日の赤が机の端を照らしていた。

机上の水の入ったコップが、震える手に押されてかすかに波打った。


告げられた理由は「業績不振」と「私生活の乱れ」。

だが業績は黒字だ。

数字は嘘をつかない。むしろ就任から売上も利益も着実に伸びてきた。

私生活にだって確かに波はあったが――それは、嵐ではなく、せいぜい通り雨程度だったはずだ。


「これが現実か…」

そう心の中でつぶやいた瞬間、耳に入る会話が遠のき、視界がじわっと滲んだ。

口元だけは笑顔を装ったが、笑うたびに胸の奥で何かがひび割れていくのを感じた。


その夜は、一睡もできなかった。

天井の模様をぼんやりと眺めながら、頭の中では会社の数字と、これからやってくる支払いの予定表が何度も何度も巡っていた。

背中に冷たい汗がにじみ、時計の秒針の音がやけに大きく響いた。


翌朝、肩書きは「経営者」から「無職」へ。

残ったのは4,000万円の借金と、なぜか胸の奥にこびりつく妙な達成感――おそらく脳が自分を守るために作り出した錯覚だろう。


お金はある。

だがそれは、自由をくれる金ではなかった。

義務と責任という鎖がしっかりと巻き付けられた、重く冷たい金だ。

支払い予定表をめくるたび、その鎖が「ギシ…」ときしむ音が確かに聞こえた。


それでも、手を離す気はなかった。

不自由さも、重みも、ここまで自分を形作ってきた証だからだ。

手放せば軽くはなるだろう。だが同時に、自分の中の何かも確実に欠けてしまう――そんな気がした。


こうして、社長としての初めての4年は、株主による突然の解任で幕を閉じた。

それはあまりに唐突で、あまりに乾いた終わり方だった。



---


そして第2章へ――


なぜ、こんな結末になったのか。

あの会議室に至るまで、会社の中では何が進行していたのか。

これから語るのは、喜びもあった4年間と、その裏側で静かに進んでいた崩壊の足音の記録である。

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