第6話 初めて感じた感情

「ゴボっ……ボァッ!!」



 私は今、水中であえて息を吐いてる。



 「……」



 そして、その私の頭を水上から高砂君が押さえつせるという状況。



 「ゴブっ」



 ブクブクと泡が上に上がっていく。その泡が"羨ましい"、"私も"と追いかけたくなるくらい──。



 「ブアッ!!!」



 パッと手の力が緩み、私は勢いよく水から出る。



 「ゲホッ!!ゴボっ!!……はぁ、はぁ……ケホッ」



 そして、必死に息継ぎを繰り返した……あぁ──。



 「気持ちい〜////」



 私は満面な赤らめ顔で次にそう呟く。その様子を高砂君は真顔で見ていた。



 「……で」



 その時だった。



 「準備運動は終わったってことだよね?」

 「え」



 ん、分かってたんだよ。コイツは主体的であって受動的じゃ興奮を覚えない変態。



 「まぁ、準備運動ってかただの娯楽ね」



 私はそう返す。



 「……」



 何だよこの真顔──。

 お前はどんなことがお望みな訳だよ!

 これでも十分SMの主従関係として成り立っているだろうが!!まぁ、お前がしたいこと……それは──。



 「じゃあ、次は"俺の娯楽"に付き合って」

 「……まず何をするか教えてよ」

 「大丈夫、これより"少し苦しい"くらいだからあまり心配しないで」



 ニッコリととんでもない発言。"これより苦しい"……私以外が聞けばマジで通報してるだろうな。



 「あ、少し苦しいってのは特に精神面かな」

 「あ?」



 なんかボソリと言ったこの言葉……けど、これが私を──。



◇◇◇



 「じゃあ、息は整った?」

 「いや、苦しいままの方がもっと快感得られるんだけど」



 私と高砂君はプール内にいた。高砂君になれたのか私もとんでもない発言をしてしまっている。



 「いや、これはあくまで実験だから。梅宮さんにしかできないこと。だからちゃんと準備してほしい」

 「?」



 私はクエスチョンが浮かんだ。



 「常識が通じないアブノーマルな梅宮さんその人が一番されたいことだと思う」

 「マジで殴っていい?軽く肩パン」

 「良いよ?」



 ゴスっ!!



 「うぐっ!!」



 流石に高砂君の暴言と暴力(?)に耐えかねた私は手を出した。割と強めだけどまぁ、このくらい良いんだよ。



 「それじゃあ、息を大きく吸って準備できたらOKマークで」

 「……分かった」



 私は念入りに呼吸をした……よし。

 そして──。

 ドプン!!



 「!!……」



 私は高砂君と水中の中で目を合わせていた。

 コポポ……コポ──。



 「……」



 無意識に漏れてく泡の音を聞きながら私は高砂君の顔を見つめる。



 「ん」

 「!」



 あれ?

 水の中で私を見つめてくる高砂君──。



 「ぶっ……」



 ゴブンと思わず私の腕が高砂君を突き放そうと高砂君の肩を押す。



 「……」



 でも──。



 『こっちから目を離さないで?』

 「!?」



 そんな顔をしながら優しく……ゆっくりと私の手を握りしめる。



 「……」



 い、いや!!今更だけどこれは痴漢!!

 私は手遅れなことを頭の中で喚き散らす。



 『もっと力を抜いて俺を──』

 『え──』



 なのに──。



 『そのまま……そのままで』



 私はそんな高砂君から目を離せずにいた。

 スッ──。



 「!!!」



 気づけば、高砂君は私の顎に指を添えていた。まぁ、顎クイね──。



 『ちょっ!!』

 『ん?』



 焦る私に対して穏やかに微笑んでくる──。

 い、いや……その……。



 「ごぶぉっ!!!!」



 私は思い切り息を吐き出していた。

 ザバァン!!!



 「はぁ……はぁ……」



 その時、水面から上がった私は感じた。



 「少しは……楽しめた?」



 高砂君はとんでもなく──。



 「水中ナンパ♡」



 "興味深いやつ"なんだと。



◇◇◇



 「今日はありがとうございます」

 「ん……ん」



 私と高砂君はプールから上がり、休憩スペースで飲み物を飲んでいた。



 「いや、まぁ──」



 私は上手く言えずに目を泳がす。



 「高砂君さ──」

 「ん?」



 私はさっき感じた感情の正体を高砂君にぶつける思いで聞く。



 「モテるでしょ?」

 「あ、そう思う?」

 「!!」



 何だその返し!!



 「水の中だと自分を隠さないで済むからありのままでいられるんだよね。だから、最高に笑える」

 「……」



 変態だ──。



 「梅宮さん……やっぱ、俺のこと……嫌い?」

 「嫌い」



 私は反射的にそう返し、高砂君はシュンとした。



 「でも──」

 「ん?」



 けど、こう私は続けた。



 「た、楽しかった……よ////」

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