第25話 勉強会と思わぬ展開
夏休みに入り、ひたすら課題をこなし、バイトに励む日々が続いていた。
俺は課題をするとき、音楽を聴くよりも、アニメの戦闘シーンなどで流れるようなBGMを好んで聴く。
その方が集中できるからだ。
そんな俺の夏休みは、だいたいこんな感じだ。
朝5時頃に目が覚める。
着替えて、5時半頃から体型維持のために近所の坂道をランニングする。
家に帰ってシャワーを浴び、朝食を済ませてから課題に取り組む。
疲れたらスマホを触ったり、昼寝をしたり、外出したりする。
バイトがある日は夕方に出かける。
夜もまた課題を進める。
夏休みが始まってまだ3日目。
そんな時、一通のLINEが届いた。
差出人は春原だ。
春原とLINEを交換した覚えはなかったので、疑問に思いながら画面を開くと、「いきなりごめんね。佐藤からLINEを聞いたんだ」というメッセージ。
その直後に、「助けてー、補習嫌だぁー。今日の分は終わって帰るところー」と続いた。
俺は、なんて返事をしていいかわからず、とりあえず「お疲れ様。頑張って!応援してる」と送った。
送った後、俺は少し考えた。
「助けて……」という言葉が頭に残った。
思えば、彼女には何度か助けられてきた。
他のクラスの生徒に絡まれた時も、球技大会の時も。
今度は俺が助ける番だ。
そう思い、勇気を出して「よかったら、勉強、教えようか?」と送った。
すると、すぐに「本当!いいの?」と返事が来た。
「うん、いいよ」と俺が返すと、その直後に着信が鳴った。
え、まさかの電話……?と少し戸惑いながらも、電話に出る。
「ごめんね!ありがとう!ちなみにこれから空いてる?」
電話口から春原の明るい声が聞こえる。
「うん、空いてるよ。今日はバイト休みだし……」
「本当!じゃあ、花隈駅近くのカフェでいい?私、ちょうど補習が終わって校門にいるから」
「うん、わかった。すぐに向かうよ」
通話を切った後、俺は急にソワソワし始めた。
カフェで、しかも女子と2人きり。
どうしよう、緊張してきた。
俺は素早く着替え、寝癖がないか鏡で確認して家を出た。
約束のカフェに着くと、春原が立っていた。
俺が近づいて挨拶をする。
「えっと、おはよう……でいいのかな?」
「早っ!おはよう!」
店内を覗くと、満席だった。
「ごめんね、別のカフェに行こうか……」
そう言って何軒か他のカフェを回ったが、どこも人が多かった。
夏休みだから仕方ない。
みんな考えることは同じらしい。
どうしたものかと考えていると、春原が申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、また今度で──」
彼女の言葉を遮るように、俺は咄嗟に言葉を発した。
「それなら、俺の家はどう?」
春原はキョトンとしていた。
「い、いや、嫌なら別にいいんだけど……」
焦って言い直す俺に、春原は満面の笑みを向けた。
「いいの?ありがとう!」
その笑顔に、俺はなぜかホッとした。
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