<「幼女になったようじゃ」を読んでのレビューです>
文体は軽やかで、会話と地の文が交互に現れ、説明の多さを感じさせない構成になっていました。
導入部は「刀としての意識」から始まり、人間へと変化していく過程が、知覚の発生とともに描かれる。設定の説明と心理の描写が重なり、違和感よりも自然さを優先した流れが印象的でした。
個人的に印象的だったのは、
「――感じる。温かい温もりが、右手から伝わってくる。その暖かさが、ものすごく心にしみる。」
という一文です。物であった存在が初めて感覚を確かにする場面であり、単なる説明以上に読者に共感を誘う瞬間になっていました。
題材は派手ですが、書きぶりは落ち着いていて、余計な装飾に流されない。だからこそ、主人公の驚きや喜びが素直に響くのだと思います。読後に残るのは、設定の奇抜さよりも、物語を語ろうとする真摯さでした。