第12話 記者会見
夜明け前、夜勤の人間が仕事を人通り終えて帰りの準備をしてる頃、超朝当番の人間が仕事に行く準備をしている頃だろう。
そんな早朝に一通のメッセージが凰介のもとに届く。
凰介はまだ眠く頭が痛くなるのを我慢して細目でそのメッセージの内容を確認する。
それを見た凰介は頭痛がする頭を抑えながらベットから起き上がる。
「やはりこうなったか……」
凰介はこの前章譚の終幕に向かい、最後の行動を始める。
***
午前11時、青春ヶ丘学園では記者会見が開かれていた。
「お待たせいたしました」
事の発端は今朝、ネットニュースに載っていた一つの記事。
それは『引退がささやかれていた。青春ヶ丘学園のアイドル部の夜忍月和が密会をしていた』という記事だった。
記者会見には学園長、教頭、そして今回の件に深く関わっている筑紫先生が席に座った。
そして目の前にはカメラを構えた多くの記者たち。
「まずは今回の一件についてアイドル部顧問である筑紫先生からご説明をさせていただきます」
校長の説明のあと筑紫先生がマイクを自分に近づける。
「ご紹介に預かりました。青春ヶ丘学園アイドル部顧問の筑紫五恵と申します。この度はお集まりいただきありがとうございます」
筑紫先生は堂々と言葉を発する。そこに不安や緊張から来る揺らぎなど微塵も感じない。
「まずは今回の騒動につきましては学校側からは問題のない行動だと判断いたしました」
筑紫先生のその発言と同時にカメラのフラッシュとシャッター音が鳴り響く。
筑紫先生や学園長も教頭もまったく動じず、場が一旦落ち着くまでただ待つ。
そして場が一旦落ち着いたところでまた筑紫先生が話始める。
「今回の一件に付きましては多くの誤情報が蔓延した結果だと我々は判断致しました。また今回のようなことがなるべく再発しないように日頃からの生徒たちのとコミュニケーションを増やし、また距離感の研究に取り組みたいと考えております」
「この時点で何かご質問がある方は挙手をお願い致します」
教頭が進行役となり質問タイムと入る。
多くの記者が手を挙げる。
***
30分ぐらい経過した頃、さまざまな質問が出てきた。
『今回の件を学校側からはどのように対応するのか』『今後、具体的にどう生徒と接していくのか』『今回の責任をどう取るのかと』など至ってつまらず定例文のような質問が飛ぶ。
それに学園長、筑紫先生は固められるものは具体的に、人によって変わることなら曖昧にだが考えとその理由をしっかりと語った。
質問が被りだしてきた時、一人の男が指された。
「毎晩新聞の勝峰です。引退前と言えど現役アイドルが秘密裏に男性と密会をしていた。これについてはどうお考えですか?」
「まず当該生徒の引退はまだ決まっておりません。憶測を確定した情報のように語らないでおいてください。そして私は今回の件に彼女たちに非はないと考えています」
「しかし密会は事実。それが起きてしまったことが重要ではないのですか?これが他のメンバーも異性と密会している可能性もあることもあると思うのですがそこはどうお考えで?」
「それについては私は何も問題があるとは思いません」
筑紫先生のその回答に会場がどよめきシャッター音が鳴り響く。
「確かにアイドルとして恋人は作るべきではありません。これは顧問としての意見です。ですが一人の教師としてはその考えには賛同できない部分があります。誰かが誰かに恋するのは自然の摂理、なぜそれを他人が否定する権利があるのですか」
これは筑紫が昔から考えていたことだ。
愛とは恋とは、ある種の病だ。そしてそれを治せるのは自分自身だけであると彼女は思っている。そしてそれは幸福と不幸を招く病だと。
ではなぜその幸福を他人が捨てろと命令できるのか?
それが本人の為だと言うが、それは違うというのが筑紫の考えだ。
彼女にとってそれはファンの言い訳であり、ただただ自分の欲望を、理想をアイドルに押し付けているだけに過ぎないのだと。
「彼女たちは正真正銘のアイドルです。美しく輝く華です。私は彼女たちの教師として、一人の大人としてファンとしていつまでも味方であり続ける所存です!」
その強い決意表明に場は静寂と化し、一瞬静まり返る。
だが一人の諦めの悪い男がその沈黙を破った。
「問題をすり替えないでいただきたい。重要なのはこのような事実が判明してしまったことです。それについてどのように対応するつもりですか?」
「もちろん部員には注意はします。ですがそれでも私は深く言うつもりはありません」
「それは伝統あるアイドルの顧問としてどうなのですか」
「私はアイドル部の顧問である前に一人の教師であり、アイドルの味方なのではなく、彼女たちの味方です!!それだけは間違えないでいただきたいです!……他に何か質問はありますか?」
「クッ……!……い、いいえ」
「そうですか」
これで終わり、解散だと誰もが思った時、筑紫先生の背後にあるスクリーンが降りてくる。
そして部屋の電気が消えスクリーンにある映像が映る。
それは
それが彼らの今後にも大きな選択を与えることになる。
***
学園から離れた少し鼻がツーンとなる場所で凰介はほくそ笑んでいた。
手元にはスマホがありそこには学園の公式チャンネルからの記者会見のライブが映っていた。
「ふふふ、今の段階でそこまで消耗して大丈夫か??決め手っていうのはな、相手が弱ってる時に最も効果を発揮するんだぜ?準備は整った。もう止まらねえ。さぁ本番はここからだ」
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