盗賊、魔法学校の教師になる。
pillow
盗賊、魔法学校の教師になる。
第1話 私のクラスの担任はなんか変
私、シャーロット・ウィンストンのクラス担任は一言でいうとバカです。
魔法学校の先生なのに使える魔法は三つしかないし、まともに魔法として成立しているのかも怪しいものがほとんどだ。
前回の授業でも魔法陣を描き間違えたのか、何も起こらなかった。またある時は教室いっぱいが白い煙で覆われて大変だった。それも皆階級は第一階位の魔法ばかり、下手したら生徒よりも魔法が使えない可能性まである。そもそも歴史の授業なのに脱線ばかりして自分のしょうもない魔法のお披露目ときた。
最悪だ。
「席につけぇ〜」
そして今日も先生の気だるそうな声がクラス全体に広がる。朝礼と私の代わり映えのない一日がゆっくりと始まる。
しかし私は知っている、実は先生、クライヴ・アッシュ・クロフトがとても強いということを。
先週のことだ。
学校の図書館で調べ物をしていて気づけば二十時を過ぎていた時のことだ。急いで帰路に着く途中、私は近道をするために飲食店が立ち並ぶ、繁華街を通ることにした。
日中に何度か通ったことがあるので道に迷うことはないとあまり不安を感じることなく足早にさまざまな色の照明光る街並みを通り過ぎていく。
この角を曲がりさえすればあとは一本道で家に到着という所まで来たとき、私の世界は一変した。
私の視覚と嗅覚が経験したことのない刺激を受けたからだ。
白い粉をスプーンで炙り何やら良からぬことをしている者。視線を逆に動かすと男女が何やらイヤらしい雰囲気を出して、今にもいかがわしい事を始めようとしている。
地面に座り円になってお酒を飲んでいる者達。実にさまざまだ。
道幅は決して広くないため、この円の中央を通らなければ家に帰ることはできない。元来た道を戻るべきだろうかと私が困ってオロオロしていると。
「お嬢ちゃん、こんなところで何をしてんだ」
「いや、その、家に帰ろうと」
体臭と口臭が入り混じった凄まじい匂いを放つ中年の男に私は思わず後ずさった。男はさらに下卑た笑いを浮かべながら私との距離を詰めてくる。
「それじゃあ、オレ達は邪魔だな〜ギャハハ、まぁなんだおじさん達と少し飲んでいきな」
「ちょっと私学生なのでお酒は……」
私と男のやり取りが他の浮浪者達の目にも留まり視線が一つ、また一つと増えていく。どれも好奇の視線であり誰も助けてくれそうにない、むしろ私にとってマイナスなことを考えているようなねっとりとした視線を感じ取ってしまった。
「まぁまぁ、お嬢ちゃん。悪いようにはしないから」
「ダイジョウブ、ダイジョウブ」
「お嬢ちゃんくらいの歳にはもう俺は飲んでヤっての毎日だったから」
別の男達も加わり肩と腕を強く掴まれ無理やりお酒を酌み交わすグループの中に座らされてしまった。
彼らは一体どんな目的があってこんな場所で大勢集まりお酒を飲んでいるのだろうか。
様々な疑問がよぎりつつ私の心臓は予測のできない事態に心臓の音が外に聞こえるのではないかと思えるくらい高鳴り鼓動が早くなっていた。
そして私が座ったのは先ほどの如何わしい事を始めようとした男女のすぐ前であり、背中に半裸になって絡み合っている吐息と熱、そして体液を迸らせていた。いつの間にか自分の知らない異世界に引き込まれた私の脳内は早々に考える事を放棄してしている。押し付けるように渡されたなみなみと注がれたお酒のグラスには怯え切った自分の顔が写っていた。
(助けて神様)
祈らずにはいられなかった。
「ウィンストン何やってんだ?こんなところで」
私の名前を呼ぶ声に反応して振り返る。
「先生?」
私を呼んだのは学校の先生でありクラスの担任でもあるクライヴ・アッシュ・クロフトだった。私がこの路地を入ってきたちょうど入り口付近に先生は片手で酒瓶を持った状態で眺めていた。
酔っ払っているのか顔が朱色に染まっている。
「何?クラちゃんの知り合い?」
「知り合い...つうか教え子だ。前に話したろ、俺ガッコの先生だから」
クライヴ先生は大股で歩きながら私とおじさんの隣に「ごめんよ」と断りを入れつつ強引に入り座る。一拍おいてブッとおならをした。
(サイテッー)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます