五日目
昼の光は本来なら安心感をくれるはずなのに、この廃墟では逆だった。
天井の隙間から差し込む光は、白ではなく赤みを帯びている。
屋根の色が反射している……そう思おうとしたが、明らかにその赤は生き物の血のように濃く、揺れていた。
カメラを回して居間を移動していると、畳が妙に柔らかい感触を返してくる。
足で踏み直すと、じわりと水が染み出した。
しかし、よく見るとそれは水ではなかった。
真っ赤な液体が畳の目からにじみ、俺の靴底に吸い付くようにまとわりつく。
「……悪い冗談だろ」
靴を脱いで後ずさると、赤は畳から引っ込み、跡形もなく消えた。
廊下に出ると、壁に貼られているはずのない紙が目に入った。
和紙に墨で大きく「七」とだけ書かれている。
それが何枚も、廊下の両側に等間隔で貼られていた。
数を数えてみた。
一……二……三……四……五……六……七。
最後の一枚の前に立った瞬間、家全体が小さく揺れた。
カメラのマイクが拾ったのは、遠くから響く祭囃子のような音。
太鼓と笛、そして人の笑い声。
だが、外は静まり返っている。
その音が唐突に止まったとき、背後からささやく声がした。
——「あと、二日」
振り返ったが、そこには誰もいなかった。
ただ、最後の「七」の紙がいつの間にか「五」に変わっていた。
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