一日目

俺はスマホのカメラを手に取り、撮影ボタンを押した。

「これから7日間、ここ『赤い屋根の廃墟』で撮影を続ける。怪奇現象の真相をはっきりさせるためにな。」


廃墟の扉は、想像以上に重くて錆びついていた。

押しても引いてもびくともしない。

「うーん、扉はダメか。窓の方を見てみよう」

仕方なく横に回り込み、窓から内部を覗く。


薄暗い室内は埃まみれで、かつての生活感はすっかり失われていた。

家具は朽ち、壁には剥がれた壁紙が垂れ下がっている。


「ここで何があったんだろうな」

独り言を呟きながら、俺は懐中電灯を取り出した。


まずは外観を一通り撮影し、次に窓を割ってでも入ろうかと考えたが、それはさすがに躊躇した。

「こっちは少し隙間があるな。じゃあ、こっから入ってみる」

結局、近くにあった小さな隙間から身体を滑り込ませるようにして廃墟の中に入った。



内部はひんやりとしていて、湿気の匂いが鼻を突いた。

床には散乱したガラスの破片や木の破片が散らばっている。


カメラを回しながら、俺は周囲をじっくり見て回った。

壁にかかっていたと思われる額縁が倒れ、写真が床に散らばっている。

「この家に、かつて人が住んでいた形跡がある。けど、今はただの廃墟だ」


「これ、誰かの家だったんだよな」

俺の胸に、わずかながらも哀愁が漂った。


だが、心霊現象はまだ何も起きていない。

確実に何か起きるそう信じて、俺はさらに奥へ進む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る