第二夜 手紙
席につくと、前から手紙が回ってきた。宛先は後ろの後ろの席の人。少しがっかりしたけれど、私も同じように回した。
またもや手紙が流れてきた。今度は右斜め後ろのあの子。私は体を半身ひねって、次の番に手渡した。今度は私にくるかなぁ。
流れる流れる、手紙は川の奔流のように、前へ後ろへと流れていく。
私はその中の支流の一つ。手紙はスムーズに宛先に届くこともあれば、岩にぶつかり波が弾けて、うまく届かないこともある。行方のなくなった手紙の束が、教室の床には溜まっている。
白い、白い、海。
「じゃあ、ホームルーム始めるぞ」
縦横無尽にハラハラと。
手紙は角をはためかせ、あっちこっちに運ばれる。いや、彼らは運ばれることで運んでいるのだ。誰かが内側に書き記した、何か大切なことがらを。
けれどその時、窓際のその子が目に入った。彼女には一通も手紙が来ない。彼女は手紙を運ばない代わりに、誰の手紙も受け取らない。いつも独りで空を見上げて、風の音に耳を澄ませる。
可哀想な子。寂しそうな子。
でも何故だろう。
彼女はこの教室の誰よりも、美しく気高く見えたんだ。
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