第18話 魂の在りか
どうやらモンスターを『合成』すると、強い方のモンスターの自我が新しいモンスターへと引き継がれるらしい。
じゃあ弱い方のモンスターはどうなるのか?と疑問に思いつつ労働力確保のためコアで新しいゴブリンを召喚すると……
「お前……ゴブ吉なのか?」
「ゴッブ!」
と言うように、ついさっき消えてしまったゴブ吉がオレの問いかけに片手を上げて反応を示し、元気な姿で再び召喚された。ただし強さは他の召喚されたばかりの個体と同じ。つまり知識と記憶以外は初期化された状態であったわけだ。
「おい、ゴブ助。ゴブ吉はお前の魂の中にいるって感じのジェスチャーをしていなかったか?」
「~~~♪」
知能も向上したためかマスターからの質問をはぐらかすという悪知恵まで身につけたらしい。どこかの精霊に似てウチの連中は問題児ばかりだな。
コイツのことは放っておいて、能力が初期化したと言っても良い事はたくさんある。コチラから詳しい説明をせずともミルワームの飼育は完璧にこなしていたからな。
ただ、能力が低下したことで今まで持てていた荷物が持てなくなっているようだ。多少の不便を感じているように見えるが、これは時間と共に解決してくれることだろう。それよりも、まずは気になっていることを解決せねば。
「……どういうことだと思う?」
「よく分かんないっス。ただコアの特性を考えれば理解できなくもないかなぁ~って感じっスね」
合成されたばかりのゴブ助の上に頭に乗っかり、楽な移動法を試行錯誤しているクロには凡その察しはついているらしい。
「コアの特性?」
「前も言ったっスけど、そもそもダンジョンのコアってのは死者の魂とかがマナの影響によって生まれるっス。つまりコアには元より魂をその身に宿すという性質があるんスよ」
そもそもコアのこの能力も、この世界で不死者を誕生させないために創世神が創ったシステムであるわけだ。
ではなぜ魂をコアにため込むことができるようなシステムがあるのかと言うと、魂だけの存在となっても、マナをその身に宿した生き物の魂と言うのは周囲のマナに影響を及ぼしてしまうだけの力が宿っている。それこそ強者の魂ともなるとその影響力は計り知れないものらしい。
そんな魂が自然下で浄化されるのには少なくない時間が必要となり、下手をすれば周囲のマナに悪影響を与えて最悪の場合は不死者になってしまうかもしれない。
しかしダンジョン内で死亡した場合は周囲に影響を与えることなく即座にコアに吸収されるので、周囲に悪い影響を与えることなく、コアの中で比較的簡単に浄化され輪廻の輪へと帰ることになるわけだ。
ではダンジョンに召喚されたモンスターが消滅したときその魂はどうなるのかと言うと、これもまた他の魂と同じくコアに吸収される。
『合成』で消えたゴブ吉であるが、コイツが消えたときコアのポイントが100ポイントほど増加していた。つまりダンジョン内で倒されたときと同じように、ゴブ吉のマナの1部と一緒に知識と記憶を宿している魂がコアに戻ってきたということだろう。
そして今回のゴブリン召喚には浄化される前のゴブ吉の魂が使われ、この世界に再び現界したということだ。
「モンスターがダンジョンの中で輪廻を繰り返してるってのは、他のダンジョンマスターも気が付いてんのか?」
「さあ?基本的にはモンスターってのは消耗品扱いっスからね。殺されたら新しいのをコアが自動で召喚してダンジョンに来た冒険者を返り討ちにする。いちいちモンスターの自我を確かめようだなんてメンドウなこと、考える方が可笑しいんじゃないっスか?」
「そういうもんか。でもさ、知識や経験が引き継げるなら、例えば戦闘訓練とかメッチャ積ませときゃ再召喚したときも最初から戦力としてある程度期待できるんじゃねぇか?」
「かもしれねっスけど、他のマスターはわざわざ戦闘訓練を積ませる必要までは感じてないんじゃねっスか?ジャンジャン冒険者を招き入れてジャブジャブ召喚したモンスターを湯水のように使ってドンドンとダンジョンの肥やしにする。そうやってポイントを稼ぎつつ、マスターのレベルアップを繰り返してより強いモンスターを召喚する方が楽~に早~く強くなれるってみんなが考えているはずっス」
「そうだな。でも俺の場合は……」
現代兵器と言う、一般的には雑魚とされるゴブリンですら比較的簡単に強くなるための方法がある。銃火器であれば身体能力が冒険者ほど高くなくても引き金を引くだけで簡単に敵を倒せる力を持っている。
問題なのはその値段がべらぼうに高い事と、それに付随して弾薬などの値段も高いことだ。だが、知識と経験を持ち越すことのできるゴブリンがいれば、例え経験を積んだゴブリンが死んだとしても再召喚でこれまでの訓練が無駄にならない。その最大のメリット生かせるような組織を構築できれば……
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