第15話 ゴブリン召喚―――!!
冒険者を返り討ちにするためにはお金を稼いで高価な武器を購入し身を守ることも重要ではあるけど、ポイントを溜めて強いモンスターを召喚し集めることも重要だろう。
これまでは敵を油断させる為に敢えて戦力の拡充はしてこなかったが、ココもいつまでも冒険者に発見されないとも限らない。
そろそろ覚悟を決めてモンスターの運用実績を積まなければならない時期が来たのではないだろうか。ということで、とりあえずスライムに次いで安いゴブリンを召喚することにした。ミミック・スライムは……まあ、癒し枠として置いておく。
「ゴブゴブ」
RPGでも出てきそうな、いかにもと言った見た目のゴブリンだ。体長は1メートルほどでボロボロの布を腰に巻いており、薄い緑の体表に鷲鼻のようなカーブの効いた大きな鼻が特徴だ。
「おう、ゴブ助。何か面白いことやってみろっス!」
「ゴブッ!?」
「何だよそのパワハラ上司みたいな無茶な絡み方は!てか、ゴブ助ってなに?勝手に名前を付けんじゃねぇよ」
「チッチッチ、甘いっスよマスター。召喚されたモンスターってのに上下関係を骨の髄まで叩きこむのは常識っス。――――オイっ!何ボーっと突っ立ってんだゴブ助ぇ!テメェは指示待ちゴブリンか!?仕事ってのは自分から探して見つけるもんだぞ!やる事ねぇなら焼きそばパンでも買ってこいやぁっス!」
「何だよ上下関係を叩きこむって。ブラック企業でもそんな露骨なつめ方しねぇだろ。お前もコイツの言うことは聞かなくていいからな」
「ゴブ~……」
なおもゴブリンに向かってメンチを切るクロはさておき、このゴブリンの知性がどの程度なのかは調べておかなければ。
そうしてしばらくの間は様々な検証に付き合ってもらったわけだが、いくつか分かったことがある。
まず知性に関しては大体5~6歳の子供ぐらいとなるだろう。手先が器用とは言い難く、折り紙を手伝いをさせようと思ったが上手くいかないので断念した。筋力に関しては一般成人男性を下回るが、中学生程度ぐらいはある。
総じての評価は……戦力として期待できるほどではないけど、いればそこそこ活躍するかもしれない、に落ち着くかな。
まあせっかく召喚したんだ、当分は戦う事も無いだろうから色々と手伝いをしてもらうことにしよう。ということで、以前から考えていたプロジェクトXの計画を進めることにする。
「ということで、お前にはコイツの世話をしてもらう」
「ゴッブ!」
目の前にあるのは先ほど≪等価交換≫で購入した巨大な収納ケース……と、一緒に購入したミルワームだ。
ポイントを得るにはヒトをダンジョン内で殺さなければならない。だが不意に思ったのだ『アレ?ヒト以外でも肥やしにすればポイント入手できるんじゃね?』と。そこで試しに外で捕まえた甲虫をダンジョン内で殺したところ、確かにポイントを入手することができた。
もっとも虫が弱すぎるためか1ポイントだけではあった。甲虫を捕まえるのに20分以上の時間がかかったのでかなり効率が悪いと言える。だったら自分の手で虫を増やして殺せば、簡単にポイントがゲットできるのでは?と考えたわけだ。
そうして繁殖がしやすく管理も楽そうなミルワームに焦点を当て、今後はコイツらを増やし殺していくことでポイントを定期的にゲットしていこうってのがプロジェクトXの詳細だ。
「――――って言うわけさ。どうよ、オレの非の打ち所のない完璧な計画は?」
「ナルホド、みみっちいマスターにはピッタリなショッボイ作戦っスね。ただ、どうしてこのゴブリンを召喚したタイミングで発表したんスか?」
「あ、いや……その……」
「どうせミルワームが気持ち悪くて自分で育てるのが嫌だったって情けない理由っスよね?」
「うぐっ!?」
「はぁ~……オイラのことを散々パワハラ上司だのなんだのと言っていたくせに、自分もしたくない仕事を部下に押し付けるとんだパワハラ気質のクソ野郎じゃないっスか。まったく、どの口でオイラを批判していたんだか」
「い、いや、でも見てみろよ!ゴブ助だって嫌そうな顔してねぇじゃねぇか!」
嫌そうっていうよりは、何か旨そうなものを見ているような感じに見えなくもないが……ゴブリンって虫を食べるのか?だったら、プロジェクトXが成功すれば少しぐらいゴブ助のおやつとして上げてもいいだろう。
「オイラはそういう小さなことを言っているんじゃないっス。自分がしたくない仕事を部下に押し付けるのが正義か悪なのかを問うているっス!言うなればこれは大義の話をしているっス!」
その後何やかんやって何故かクロにお菓子を買ってあげることで話はついた。……解せぬ。
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