《まさかの一面》

 だがモグラ本人はノリノリな様子だ。それから玉露を口にしてふと息を吐き出した。まるで戦闘前の準備運動かのようだ。

「ふぅ~。久しぶりに弁護士やるなぁ!」

「あのモグラさん……。弁護士の資格なんて持っていましたっけ?」

「えっ、持っているよ? 俺、占いはできないけれどほかの資格は大体持っているから」

 ふふんと、鼻を鳴らし自慢げな様子のモグラに海月はさらに唖然としてしまう。この自信たっぷりな様子だと本当であるだろうと海月は踏んだ。

 そういえばと海月が頭を過らせれば、自分がモグラに助けられて拾われてから金に困ったことはなかったなと感じてはいた。

 特にモグラが働いている姿を間近で見たことはなかったが、貧困で困ったことはない。占いの勉強をしながら義務教育なども受けずに大体の教養科目を習得できたのはモグラの努力の賜物だ。

 普通に食事もしていたし、親子のようにテーマパークへ行くこともできた。――こうやってぎこちなくも笑えることができるのも、モグラが傍に居てくれたからだ。

 海月はモグラの金銭関係に疑問を抱いた。幼き頃から思っていた疑念が、どうしてそこまで金に困らなかったのだろうかとという疑念が水の泡沫のように弾けて消える。

「まぁ俺には金の運が付いているからね。金にはそこまで困らないわけよ。そんなことより、打ち合わせしたいからお宅訪問しても良いかな。その兄弟にも興味あるし事情も訊きたいし、それに……」

 モグラはにったりと含んだように微笑んだ。仁田は少し慄いた。

「虫が食べられるのは良いよね~! ミミズも幼虫もカエルもいるよね? うわ~い、楽しみだ!」

「はぁ?」

 ゲテモノ発言で嬉々としているモグラを仁田は宇宙人でも見るかのような疑心な瞳で見る。

「弁護士さん、すご~い!」

 だが、なにも知らない美波はどうしてだが海月を見てはしゃいでいたので「自分ではありません」とやんわりと訂正をしたのだ。

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