第7話 笑顔の裏にあるもの
朝、学園に着いた瞬間、妙な違和感があった。空気が重い。誰かが何かを隠してるような、そんな気配。
俺は笑いながら教室に入った。いつも通りのバカ騒ぎ。パンツ逆のやつ、爆発した先生、ツッコミが追いつかないユウ。全部、いつも通り。でも、俺の中では何かが引っかかっていた。
昨日見た“黒の記録”の紙片。妹の筆跡。あれが偶然だとは思えない。あいつは、何かを知っていた。それを俺に伝えようとしていた。でも、何も言わずに死んだ。俺は、何も知らずに笑っていた。昼休み、屋上に行くと、カイがいた。珍しく先に来てた。無言で缶コーヒーを差し出してくる。
「……お前、最近笑い方が雑だな」
そう言われて、俺は苦笑いした。
「雑でも、笑ってりゃ強くなれるからな」
「強くなるだけじゃ、守れねぇぞ」
その言葉が、妙に刺さった。カイは、妹を異能で失ってる。俺と似てる。……まあ、俺と似てるやつはたくさんいるんだけど。クロウもそうだし。
でも、あいつは笑わない。俺は笑う。それが、俺の違いだと思ってた。でも、最近はその違いが、ただの逃げに思えてきた。
放課後、図書室に行った。誰もいないと思ったら、あの銀髪の少女がいた。記録管理局の使者。名前はまだ聞いてない。彼女は、黒い本を開いていた。俺が近づくと、すっと閉じた。
「見ない方がいい。あなたの笑顔が壊れる」
そう言われて、俺は笑った
「俺の笑顔なんて、もうとっくに壊れかけてるよ」
彼女は何も言わず、立ち去った。机の上には、開かれたページが一枚だけ残っていた。
〈第壱章:英雄は、誰かの罪でできている〉
その言葉に、胸がざわついた。英雄。妹が憧れていた存在。俺がなりたかったもの。でも、それが“罪”でできてるなら、俺は何を目指してるんだ?知らない。英雄……なんて概念、人の数だけあるだろ。だから、この本の言葉を鵜呑みにしなくても……。
夜、帰り道。街灯の下に、見覚えのある男が立っていた。クロウ。何も言わず、ただ俺を見ていた。その目は、何かを知っている目だった。俺は笑った。何も聞かず、何も言わず。ただ、笑った。でも、心の奥では、何かが崩れ始めていた。笑顔の裏にあるもの。それが、俺を飲み込もうとしていた。
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