第2話
今、二人は明日の予定を詰めている所だった。
『付き合う』なら、『口説く』なりの『手順』を踏まえるのが当たり前と言った温子の言葉を逆手に取り、基一は温子の明日の予定まで押さえてしまった。
『デート』をしよう。
そうだ。『手順を踏まないといけない』からな。
基一はニヤニヤと笑いながら、温子に言った。
そのニヤニヤ具合が、恥ずかしくもあり、悔しくもあった。
「…そ、そんな、私がして欲しいって望んだみたいな…」
実際、会話の流れは違うのに、そこの言葉だけを切り取って言われると、あたかも温子が切望したかのようでは無いか。
ぐぬぬっ。
顔を赤くしながら、温子は悔しがる。
そんな温子を見て、基一は相変わらず笑う。
温子の反応が楽しくて仕方ないとでも言った所か。
「まぁ、とりあえず明日は定番の『映画鑑賞』で決定って事で」
そう言って基一は、再び隣に座る温子の頭を撫でる。
基一に触れられる事に慣れていない温子は、少し身体に力が入ったが、それでもなすがままにされた。
「明日はそれでOKですけど、今日は?夕飯一緒にって予定じゃなかったから、買い物に行かないと…」
温子が何気なく言った言葉に、基一は動きを止めた。
ジッと見てくる基一に、温子も続きが言えなくなる。
「…なぁ?…今まで男がいなかったとは思ってないんだけどさ。」
基一の見つめる視線が少し強くて、温子は『何かマズイ事でも言ったか』と戸惑う。
しかし何がマズかったかは、温子には分からない。
そんな温子を見て、基一は小さくため息をついた。
「初っ端から、お前の家に居座るヤツばっかと付き合ってきたとか?」
そう問われ、『そうです』とも答えにくくて温子は黙る。
「…まぁ、『付き合う』って受け入れてくれたと良い風に捉えるけどさ。」
基一はそう言って、温子に向かって小さく笑う。
「確かに、最初から『プロポーズ』したしな。急速に仲を深めようとしてたけど、初日からお前の自宅に居座る真似はしないよ」
そう言うと、基一は笑みを深めた。
初日から、自宅に居座るような真似はしない。
それは、もしかしたら、頭を撫でられる事ですら身を固くする温子を気遣ったのかもしれない。
でも、それは基一の優しさだと思った。
「とは言え、そんな男どもと一緒くたにされたのはイラつくな。」
笑っていたのに、今度はムッとした顔をする基一を見て、何だか忙しい人だなと笑ってしまう。
「笑ってる場合じゃねぇ。ちょっと、前の男よりもマシな所を見せとかねぇとな。」
基一はそう言うと、テーブルに置いた携帯を触り始める。
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、基一は素早く立ち上がる。
そして電話をかけながら、部屋の端まで行ってしまった。
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