025 第23話 美沙の躍進と影
李美琳が転入してから一週間が経過した。
デヴォラントは毎日の学校生活を通じて、彼女の行動パターンを綿密に観察していた。李美琳は完璧に中学生を演じているが、その仕草の端々に軍事訓練の痕跡が見て取れる。廊下を歩く際、視線は常に出口の位置を確認している。教室に入る時は必ず最も防御しやすい位置——壁際で出入口を見渡せる席——を無意識に選ぶ。そして何より、誰かが背後に近づくと、ほんの0.2秒だけ肩が緊張する。
デヴォラントは既に彼女の正体を把握していた。中国人民解放軍戦略支援部隊特種兵第九作戦群——通称
李美琳の方も、神崎優を「最重要監視対象」として指定していた。初日の報告書で「確証はないが、勘として間違いない。彼の目は捕食者のそれ」と記述している。しかし、まだ決定的な証拠は掴めていない。あくまで「強い疑い」の段階であり、確定には至っていない。彼女の視線は優を中心に向けられているが、時折翔真や他の男子生徒にも向けられる。最も疑わしいのは優だが、100%の確信を得るまでは、他の可能性も完全には排除できないのだろう。
デヴォラントにとって、この状況は微妙なバランスの上に成り立っていた。李美琳は自分を最も疑っているが、まだ確証はない。この「疑いと確証の間」の状態を維持しながら、彼女の動きを完全に把握し続ける。情報の非対称性——これこそが、最大の戦術的優位である。
◇◇◇
その日の放課後、花音が1年生の校舎から現れた。
「お兄ちゃん、お疲れさま」
相変わらず無邪気な笑顔だったが、その瞳の奥に微かな不満の色があるのを、デヴォラントは見逃さなかった。花音の視線が一瞬だけ鋭さを帯び、まるで獲物を探す肉食獣のような光を宿す。しかし次の瞬間には消え、再び12歳の少女らしい無邪気さに戻っている。
先週の「退屈」発言以降、花音の不満は少しずつ蓄積されているようだった。比較的平穏な日常が続いていることで、彼女の中の暴力的な欲求が満たされずにいる。
「今日は美沙の撮影の迎えに行く」
デヴォラントが言うと、花音の表情が明るくなった。
「あ、そうなんだ。私も一緒に行っていい?」
「構わない」
花音は嬉しそうに頷いた。日常の「退屈」から少しでも逃れられる機会に、期待を抱いているようだった。指先が無意識に軽く震え、体内に蓄積されたエネルギーが解放を求めているのが分かる。
二人は電車に乗り、渋谷へと向かった。車窓から流れる景色を眺めながら、花音が小さく呟いた。
「お兄ちゃん、最近何か面白いことない?」
その声には、明確な期待が込められていた。
「もうすぐ、何かあるかもしれない」
デヴォラントの答えに、花音の瞳が一瞬だけ輝いた。
◇◇◇
午後6時。デヴォラントと花音は渋谷区のとあるビル内にあるフォトスタジオに到着した。
受付で美沙の迎えに来たことを告げると、エレベーターで7階まで案内された。
スタジオ内は、大型のライトと撮影機材で溢れていた。白い背景の前で、美沙がポーズを取っている姿が見えた。カメラマンの指示に従い、流れるように姿勢を変えていく。
17歳の美沙は確かに美しく成長していた。モデルとしての素質は十分にあり、カメラの前では自信に満ちた表情を見せている。SNSでのフォロワー数も着実に増加しており、読者モデルとしての知名度は上がり続けていた。デヴォラントの記憶では、先月時点で12万人を超えている。
「はい、お疲れさまでした」
撮影が終了し、美沙が衣装を着替えて戻ってきた。表情には充実感と、何か別の期待が混在していた。
「優、花音、迎えに来てくれてありがと」
美沙は嬉しそうに挨拶した。その態度は、以前の無関心さとは明らかに異なっていた。半グレ襲撃事件での優の活躍、そして花音救出の際の献身的な姿。それらが美沙の優への評価を根本的に変えていた。今では「頼りになる弟」として、以前とは比較にならないほど信頼を寄せている。
「お疲れさま、美沙お姉ちゃん」
花音が無邪気に声をかけた。しかし、その視線は既にスタジオ内を観察し始めている。出入口の位置、人数、それぞれの体格と動き。戦闘が発生した場合の最適な動線を、無意識に計算しているようだった。
三人がスタジオを出ようとした時、背後から声をかけられた。
「美沙ちゃん、お疲れさま」
振り返ると、20代半ばくらいの男性が立っていた。身長は175センチほど、整った容貌で、芸能関係者らしい洗練された服装をしている。ブランド物のジャケットとパンツ、さりげなく高級な腕時計。全てが計算され尽くした外見だった。
「高橋さん、お疲れさまでした」
美沙が丁寧に挨拶した。声のトーンが、わずかに上ずっている。
「僕は高橋蓮。俳優をやってるんだ」
男性はデヴォラントに向かって自己紹介した。爽やかな笑顔だったが、その視線は明らかに美沙に向けられている。目が美沙の顔に留まる時間が、デヴォラントや花音を見る時間の3倍以上だった。
デヴォラントは、優の記憶を検索した。高橋蓮という名前には心当たりがある。最近、若手俳優として注目されている人物で、テレビドラマや映画で主演級の役を演じている。演技力も評価されており、今後の活躍が期待されている実力派俳優だった。SNSフォロワーは80万人を超え、若い女性を中心に人気を集めている。
「神崎優です」
デヴォラントも簡潔に自己紹介した。
「美沙ちゃんの弟さんですか。似てますね」
高橋の視線が、美沙とデヴォラントを交互に見比べた。しかし、その関心は明らかに美沙に集中している。視線が美沙の首筋に這い、鎖骨の窪みで一瞬止まり、そして胸元へと滑り落ちる。全てが0.5秒以内の動作。訓練された、気づかれないための視線移動だった。
花音は高橋をじっと見つめていた。12歳の少女らしい好奇心を装いながら、その実は彼を観察している。視線は高橋の喉元——正確には頸動脈の位置——に固定されている。まるで、どの角度から刃を入れれば一撃で仕留められるかを計算しているかのようだった。その視線には、いつもの無邪気さとは異なる、冷たく鋭い光が宿っている。
デヴォラントは花音の変化を察知した。彼女の殺人鬼としての本能が、高橋という男に反応している。
「先日のオーディション、お疲れさま。結果の方はもう少しで出ると思うよ」
高橋の言葉に、美沙の表情が期待に満ちたものになった。頬がわずかに紅潮し、呼吸が浅く速くなっている。
「ありがとうございます。結果を楽しみにしています」
「君の演技は印象的だった。きっと良い結果になると思う」
高橋の口調は親切だったが、デヴォラントには違和感があった。人間観察スキルが、高橋の真の意図について警告を発している。
視線の動き方。美沙との距離の取り方——無意識を装いながら、徐々に近づいている。会話の誘導方法——美沙を褒めることで、彼女の警戒心を解こうとしている。そして何より、美沙を見る目。あれは「才能ある新人を応援する先輩」の目ではない。
捕食者が獲物を選別する目だ。
デヴォラントは、記憶から人間観察技術を引き出した。人間の本性を見抜く技術。敵の真の意図を察知する能力。全てが、高橋蓮という男の危険性を告げていた。
「詳しい話は、今度ゆっくりと。よかったら、今度食事でもどうかな? 業界のことをもっと詳しく話せるよ」
高橋が美沙に提案した。その言葉は表面上は仕事の話だが、真の意図は別にある。
「ぜひ、お願いします」
美沙は即座に同意した。チャンスへの飢餓感と、高橋への好印象が影響しているのは明らかだった。彼女の判断は、完全に第一印象に基づいている。高橋の魅力的な外見と親切な態度に騙されて、危険性を認識できていない。
「それじゃあ、連絡先を交換しよう」
二人がスマートフォンを取り出して連絡先を交換している間、デヴォラントは高橋を詳細に観察していた。
年齢は25歳前後。身体能力は一般的な範囲内で、特別な訓練は受けていない。筋肉の発達具合から、定期的にジムには通っているようだが、実戦的な戦闘能力はない。知能は平均以上だが、本質的には狡猾さで生き延びてきたタイプ。そして、女性への接し方に慣れすぎている。この手の接近方法を、何度も繰り返してきた形跡がある。
高橋蓮は、美沙にとって危険な人物である可能性が高い。
花音もまた、高橋を観察し続けていた。その視線には、12歳の少女らしからぬ冷たさが宿っている。まるで、どのタイミングで「処理」すべきかを計算しているかのようだった。唇がわずかに動き、無音で何かを呟いている。おそらく「殺し方」のシミュレーションをしているのだろう。
連絡先の交換が終わり、高橋が美沙に向かって微笑んだ。
「それじゃあ、また連絡するね」
「はい、お待ちしています」
美沙の声には、明らかな期待が込められていた。
高橋が去った後、三人はスタジオを後にした。
◇◇◇
帰りの電車の中で、美沙は興奮状態だった。
「やった。あの高橋蓮と連絡先交換しちゃった」
美沙は夢見るような表情で呟いた。頬が紅潮し、視線は宙を彷徨っている。
「優、高橋蓮って知ってる?」
以前なら優に何かを相談することなど考えられなかった美沙だが、今では素直に弟に話しかけている。聖夜の事件以降、美沙の中で優は「守ってくれる存在」として確固たる地位を築いていた。
「今、すごく注目されてる若手俳優なの。先月放送されたドラマでも主演してて、演技力もすごく評価されてる。しかも、イケメンで性格も良いって評判なの。SNSのフォロワーも80万人超えてて、若い女の子にすごい人気があるんだよ」
美沙の説明は、全て表面的な情報だった。メディアで報じられている公式な情報に過ぎない。真実がどうであるかは、全く検証されていない。
「映画のオーディション、受かりそう?」
「どうだろう。でも、高橋さんが『印象的だった』って言ってくれたから、期待してもいいかも」
美沙の判断は、完全に第一印象に基づいている。高橋の魅力的な外見と親切な態度に騙されて、危険性を認識できていない。17歳の少女としては当然の反応だが、それゆえに危うい。
花音は静かに二人の会話を聞いていた。時々、何かを考え込むような表情を見せていたが、口を挟むことはなかった。しかし、その指先が無意識に動いている。ナイフを扱う時の動作を、空中でなぞっているようだった。
デヴォラントは、美沙を守る必要性を感じていた。しかし、単純に警告するだけでは効果がない。むしろ、彼女の反発を招く可能性がある。17歳の少女は、家族からの忠告を素直に聞き入れない傾向がある。特に、芸能界という華やかな世界への憧れが強い美沙にとって、高橋のような「成功した先輩」の言葉は、家族の忠告よりも遥かに重く響く。
より確実で効果的な方法が必要だった。
帰宅すると、正樹と恵美が居間でテレビを見ていた。
「お疲れさま。撮影はどうだった?」
恵美が美沙に聞いた。
「すごく良い感じだった。それに、オーディション受けた映画の高橋蓮さんとお話しできた」
美沙が興奮して報告すると、恵美の表情が明るくなった。
「高橋蓮? あの若手俳優の?」
「そう。こんど食事でもどうかって」
「それは素晴らしいわね」
恵美も美沙の報告を喜んでいた。元女優として、義娘の芸能界での成功を願っている。しかし、彼女もまた、高橋の真の意図には気づいていない。
しかし、正樹の反応は微妙だった。広告代理店の重役として、芸能界の裏事情についても一定の知識がある。眉間に軽いしわが寄り、視線がわずかに険しくなった。
「高橋蓮か。確かに人気はあるが……」
正樹の言葉が途中で止まった。美沙の前では言いにくい内容があるようだった。デヴォラントは、正樹が何かを知っている可能性を察知した。
「何か問題でもあるんですか?」
デヴォラントが質問すると、正樹は少し考えてから答えた。
「いや、特に問題はない。ただ、芸能界は複雑な世界だから、慎重になった方がいいということだ」
正樹の答えは曖昧だったが、何かしらの情報を持っていることは確実だった。広告代理店という職業柄、芸能界の噂や内情にも通じているはずだ。
デヴォラントは、正樹が後で自分に何か言ってくる可能性を考えた。聖夜の事件以降、正樹の優への態度は劇的に変化していた。以前は無関心だったが、今では息子として認め、時には相談相手として頼る姿勢さえ見せている。芸能界の裏事情についても、優なら理解できるだろうと判断して話してくれる可能性がある。
夕食後、デヴォラントは自分の部屋で情報収集を開始した。
インターネットで高橋蓮について詳しく調べてみる。公式な情報は美沙が言っていた通りだった。25歳、東京出身、演技力の高い若手俳優として注目されている。テレビドラマ、映画、CMと活躍の場を広げており、今年のブレイク俳優の一人として各種メディアで取り上げられている。
しかし、より深く調べていくと、いくつかの気になる情報が見つかった。
李副隊長のハッキング技術を使い、週刊誌社のデータベースに侵入する。ボツになった記事、掲載を見送られたスクープ、そして事務所の圧力で消された情報。
そこには、高橋蓮の別の顔があった。
3年前、共演した19歳の新人女優への性的関係の強要疑惑。女優側が訴えを起こそうとしたが、事務所と芸能プロダクションの力で示談に持ち込まれていた。示談金は800万円。女優はその後、芸能界を去っている。
2年前、18歳のアイドルグループメンバーへの不適切な接触。被害者は事務所に相談したが、事務所間の力関係により、うやむやにされた。アイドルはその後、精神的不調を理由に活動を休止している。
1年前、映画の撮影現場での17歳のエキストラへのセクハラ行為。複数のスタッフが目撃していたが、高橋の事務所の圧力により、関係者全員が口止めされた。
そして現在進行形で、複数の新人女優やモデルに対して「業界の先輩」として近づき、不適切な関係を持とうとしている。手口は常に同じ——親切な先輩を装い、食事に誘い、アルコールを勧め、判断力を失わせる。
デヴォラントの分析では、高橋蓮は確実に危険人物だった。美沙への接近も、純粋な仕事の話ではなく、別の目的があることは間違いない。ターゲットは常に10代後半の新人。まだ業界の怖さを知らない、夢に満ちた少女たち。
問題は、どのように対処するかだった。
美沙に直接警告しても、彼女は信じないだろう。むしろ、デヴォラントへの反発を強める可能性がある。「私の邪魔をしたいだけ」と受け取られかねない。
正樹に相談しても、確実な証拠がない限り、美沙を説得するのは難しい。しかも、正樹自身も芸能界との関係があり、強く出られない可能性がある。
より効果的な解決方法が必要だった。
◇◇◇
翌日の放課後。デヴォラントは李美琳の動向を確認していた。
彼女は神崎優を中心に観察を続けている。教室での視線、廊下での距離の取り方、放課後の動向チェック。全てが慎重で、プロフェッショナルな手法だった。最重要監視対象として指定されているが、まだ決定的な証拠を掴むには至っていない。李美琳は「強い確信」を持ちながらも、上官への最終報告に必要な「決定的な証拠」を求めて、慎重に観察を続けているようだった。
そんな中、花音が現れた。
「お兄ちゃん、今日は一緒に帰れる?」
「ああ」
二人は学校を出て、帰路に就いた。
「昨日の撮影現場、面白かった」
花音が振り返るように言った。
「そうか」
「高橋蓮って人、なんだか変な感じだったね」
花音の観察力は、やはり鋭い。天性の殺人鬼の身体に宿る異常な洞察力が、高橋の本性を見抜いていた。
「変?」
「うん。美沙お姉ちゃんを見る目が、なんていうか……」
花音は言葉を選ぶように続けた。
「獲物を見るような目だった」
その表現に、デヴォラントは内心で驚いた。花音は確実に高橋の危険性を察知している。そして、彼女なりの解釈で、その本質を言語化している。
「お兄ちゃんも、そう思ったでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、どうするの?」
花音の声には、期待が込められていた。「退屈」を解消する機会への期待。そして、美沙を守るという「正当な理由」での暴力行使への期待。
「最近はどうだ? 学校生活は楽しいか?」
話題を変えながら、デヴォラントが質問すると、花音は少し考えてから答えた。
「まあまあかな。でも、やっぱりちょっと退屈」
花音の不満は、まだ解消されていない。指先が無意識に動き、何かを切り裂く動作をシミュレートしている。
「そうか」
「お光ちゃんは何か面白いことないの?」
花音の質問には、明確な期待が込められていた。視線が鋭さを増し、呼吸がわずかに速くなっている。体が、暴力への解放を求めている。
デヴォラントは、高橋蓮のことを考えていた。美沙を守るため、近いうちに行動を起こす必要がある。
そして、その行動は花音の「退屈」を解消することにもなるだろう。
「もうすぐ、面白いことがあるかもしれない」
デヴォラントの答えに、花音の表情が明るくなった。瞳が異様な光を帯び、唇がわずかに歪んで笑みの形を作る。
「本当?」
「ああ。でも、まだ詳しくは言えない」
「わかった。楽しみにしてる」
花音は満足そうに頷いた。その表情には、純粋な期待と、何か別の——より暗い感情が混在していた。
神崎家に到着すると、美沙が興奮した様子で迎えた。
「優、花音、おかえり。すごいの! 高橋さんから連絡があって、明日お食事の約束したの」
美沙の報告に、デヴォラントは内心で警戒を強めた。思っていたより早い展開だった。
「そうか」
「すごく楽しみ。最近の芸能界のお話、たくさん聞けそう」
美沙の無邪気な期待を見て、デヴォラントは決意を固めた。
高橋蓮という男を、美沙に近づけるわけにはいかない。
明日の美沙との約束の前に、行動を起こす必要がある。
その夜、デヴォラントは高橋蓮についての情報をさらに詳しく調査していた。行動パターンの分析、人間関係の把握、そして美沙への接近方法の研究。
李副隊長のハッキング技術を駆使して、高橋のスマートフォンに侵入する。位置情報の履歴、SNSのDM、そして——他の女性たちとのやり取り。
そこには、醜悪な真実があった。
高橋は現在、5人の若い女性と同時に「業界の先輩として」接触していた。全員が10代後半の新人。手口は全て同じ。親切な先輩を装い、食事に誘い、アルコールを勧め、判断力を失わせる。そして——
デヴォラントの分析は完了した。
高橋蓮は、確実に美沙にとって危険な存在だった。そして、彼のような人間は、社会にとっても有害な存在だった。
全てを正確に把握してから、最適な対処法を決定する必要があった。
美沙の安全のため、そして状況の完全な掌握のため。
高橋蓮という男は、デヴォラントが注意深く観察すべき対象となった。
そして——近いうちに、処理すべき対象となるだろう。
調査は、既に始まっていた。
デヴォラントの口元に、冷たい笑みが浮かんだ。
高橋蓮の行動パターンは完全に把握した。彼の自宅の場所、通勤経路、よく利用する店。そして、誰にも気づかれずに「消える」最適なタイミング。
全ては計算されていた。
美沙を守るため。
そして、花音の「退屈」を解消するため。
高橋蓮という男は、近いうちに——この世界から姿を消すことになる。
その時が、もうすぐ来る。
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