プロローグ4 ダーステイルズ
『テイルズ』
そう私が言ったのは、母が
しかしそれは童話と呼ぶには余りに奇妙な物語だった。
その物語はまるで意味がないようで。
暗号のような。
詩のような。
狂人の呟きのような。
そして
渦巻くように沈む。
錐揉むように落ちる。
全てが同じ形をした物語……。
********
うつむいた少年の頭を抱き寄せ、母は両手にぎゅっと力を込めた。
「さ、もう少し眠りなさい」
どこか淋しげな、愛しさを込めた微笑み。
「また……?」
少年は顔を上げる。母親は頷く。
「ええ、今はね」
なだめるように言い聞かせ、母親は少年の体をベッドに再び横たえる。
「そして」
乱れた前髪を整え、まだ高い熱を持つ額にそっと手を当てる。
「そしていつかきっと……その人が」
*********
私の額を目を覆う、雪のように白く冷たい母の手。
そのまま私の意識は再び遠のいていき、あとはもうよく覚えていない
その先の言葉をもう一度訊ねておけば良かったと思ったりもするが、人というものはいつだって、未来の自分の後悔には気づかないものだ。
そしてここから数年後の母の死は、唯一私を必要とした存在の消滅であり、この時私は一切の生きる目的を見失った。
そして今、私は 終わる事なく沈み続ける夢を見ている。
カウス・ルルプドの警告 「その名を呼ぶもの」
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