雪国の見守り人・外伝(4) -僕は二人の姉と恋をする?-
風雪詩人
第1話 「姉」は一人のはずだった
大学生・
実家の神社で神職を務める姉・
優斗が大学3年時の夏、
高峰はかつて、大学で機械工学を専攻しており、その後、気象予報士として活躍した人物。現在では、機械工学の知識をベースに地域気象にアプローチする「
しかし、このインターンシップへの参加が、自分の「家族」の枠組を大きく変えてしまうことになろうとは、この時点では全く想像できなかった。
いよいよ夏休み期間を迎えた。インターンシップは2週間の日程で、前半は佐渡での観測実習、後半は羽越大学でのシミュレーション実習となる。
優斗は置賜を離れ、観測実習のため佐渡へと向かう。そこで、
実習のための観測機器は、佐渡の神社の敷地内にある。そして偶然にも、この神社は優斗の実家が管理する神社だった。そして現地協力者として現れたのは、なんと優斗の姉・紗花だ。紗花はこの神社の神職を務める傍ら、観測実習に励む葵と優斗を何かと気遣ってくれた。
しかし、優斗は、葵の紗花を見る目に違和感を覚えた。何となく、ぎこちないのだ。葵と紗花の関係はもちろん悪くはない。しかし、緊張しているのだろうか、どこかちょっと
そこで優斗が「なあ葵ちゃん、姉貴のこと、なんか気になる?」と聞いてみると、葵は思いもよらないことを口にした。
「実はね、優斗君のお姉さんの紗花さん……、私の実家のお姉ちゃんにそっくり過ぎるの!コーヒーを手に持つ仕草とか、一緒にスイーツを食べたときに『んんん!』と小さく呟く声まで、まるで……実家のお姉ちゃんが目の前にいるみたいなの!」
これには優斗も驚いた。
「えっ……? 似てる人なんて世の中にたくさんいるんじゃない? 葵ちゃんのお姉さんって、そんなに姉貴にそっくりなの?」
葵はこれまで抑えてきた動揺を吐き出すように続ける。
「何かね……、まるでお姉ちゃんを、そのまま丸ごとコピーしたような感じなの。 しかも、私のお姉ちゃんも実家の神社の神職……って職業まで全く同じなの!」
「えっ……、マジ……かよ……」
これには優斗も絶句した……。
インターンシップの後半は羽越大学でのシミュレーション実習である。葵と優斗は佐渡を離れ、羽越市内にある羽越大学の学生研究室に拠点を移した。そんなある日のこと、優斗と葵が実習に取り組んでいると、指導員の佐倉深雪が、観測実習の現地協力者でもある優斗の姉・高梨紗花を連れてきた。
紗花はポニーテール、白のブラウス、黒のレディーススーツ、黒のローファーで、いかにもできるキャリアウーマンの装い。
「葵ちゃん、優斗、元気にしてる? 後半の実習も、頑張ってね!」
紗花は笑顔で二人を激励し、深雪と共に別室の高峰研究室に向かって行った。
それから30分も経たない内に、また深雪が、どこか得意げな──あるいは何かを隠しているような──笑みを浮かべてやってきた。その隣には、相変わらず紗花?がいる。
その姿を見て優斗は
(なんだ姉貴、また来たのか……。 なんか忘れ物でもしたのか?)
と、特に気にも留めなかった。
しかし、深雪の口から予想もしない言葉が飛び出した。
「こちら、葵ちゃんのお姉さんの
そう、今度は葵の姉・彩花を連れてきたのだ。彩花は、紗花と瓜二つの装い──ポニーテールに白いブラウス、黒のスーツ姿。唯一違ったのは、首元のネックレスだけだった。
彩花の妹・葵は、目の前の姉の姿が、先ほど見た紗花の姿とダブってしまい、思わず二度見した。
そして、優斗は目の前の「姉貴」が全くの別人──「紗花」ではなく「彩花」──だと知り驚愕した。
(う、嘘だろ……、どこからどう見ても、佐渡で一緒に育った「姉貴」だろ!?)
そんな優斗に向かって、彩花は声をかけた。
「初めまして。……貴方が優斗君? 妹の葵がお世話になってます。 ……後半も、よろしくお願いしますね。」
(えっ? 顔や見た目だけじゃなく ……声まで、「姉貴」そのものだぁ!……)
目の前の信じられない現実に、優斗はひどく狼狽した。
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