片足不随杖持ち和風美少女型ロリババァ未亡人先生経産婦吸血鬼真祖ママのおしごと!
「さてさて、そういう訳で入学についての説明といこっか。あ、学力試験は全部パスでいいよね? 理事長特権でそういうのはパスパス全部パース! 編入試験とか採点する側も面倒だしね!」
ラッキーだね! だなんて笑顔でこちらを見据えつつ、水無月学園の理事長室の主……ブロンド色の髪をした少女が漫画で見るような椅子に座りながら、オレにそう言ってのけた。
「また私のお母さんが職権乱用してる……」
オレと同じく準備されたパイプ椅子に座りながら、ちょっとぽややんとしている母に対して、しっかり者の娘がするような嘆息を1つ吐いて見せる水無月かさご。
本当に小学生6年生にしか見えないような幼い存在が水無月かさごの母だという事実に困惑してならないが、吸血鬼だとこれぐらい普通というか当然だったりするのだろうか。
……いや普通じゃねぇよ。普通の吸血鬼ってなんだ。
というのも、水無月かさごは性格にはちょっとどころか色々と難があるのだが、その見た目は誰がどう見ても美少女である。
流石にオレの美貌には負けるが、胸に関して言うのであれば、彼女は間違いなく“ある”側の人間だ。
そんな水無月かさごに対し、ここ水無月学園の理事長先生であらせられる水無月かおるという存在は本当に幼女だった。
胸はまな板で、腰は細いどころか頼りなく、顔は確かに美人寄りだがまだ大人になりきっておらず、母性の欠片を全くもって感じられない。
だがしかし、不思議と「この人は守らないと」と思わせる危うさと、「いや、やっぱり抱かれたいかも」というよく分からない感情が同居してくる所為でオレの理性が忙しい。
「どーしたんですか、童貞人間。急に自分が異常者だって事に気が付いたような顔をして」
「全然検討違いだから黙ってろ」
「んー? どうしたの夜宮くん? ロリータコンプレックスは吸血鬼社会じゃ別に普通の事だと思うよー? だって吸血鬼って不老の存在が多いし。長生きしたら頭が変になる吸血鬼も意外と多いのよねー」
「オレはロリコンじゃないんですけど」
「今はまだ、ね? さーて! お偉いさんに回す書類作り終わりー! それじゃ、夜宮くんに水無月学園の説明をするね!」
「……いいんですか? オレ、中卒ですよ?」
「じゃあ明日から高等部だね! 色々と都合が良さそうだからかさごちゃんと同じクラスにしとくね! かさごちゃんも今年から高校1年生だからね! そういう訳でかさごちゃん! そろそろ退室しよっか?」
「えっ」
「いやだって、夜宮くんにとってのプライバシーな事とか色々聞くし。かさごちゃんは確かに
「理事長室、個室、2人きり。何も起こる筈もないのでは?」
「勘の良い娘は大好きです!」
「何考えてるんですか母ァ!?」
「冗談冗談! そういう訳でさっさと出てった出てった! 流石に先生としてのお仕事は真面目にやらせて頂きます! ほらほら出てけ出てけー!」
渋々というか、明らかに信用していないといった眼差しでこちらを見据えながらも、理事長室の部屋に出る事にしたのであろう彼女はお行儀よく「失礼しました」だなんて言の葉を述べてから室外に出ていった。
「さて、何から話したものかしら。あっ、夜宮くんも楽にしていいからねー? 背筋伸ばすの疲れるでしょ? そうだ、長話のお共にお茶飲む? この前、学園に色々寄贈してくれる下冷泉さんから1キロ100万円する玉露茶を貰ってね。これが美味しいのよねー」
ちょっと待っててねー、だなんて気が軽い返事をしながら椅子から立ち、右足が全く動かないであろう身体を支える為の杖を器用に使いながらも、てきぱきとした動作で来訪客用のお茶の準備をする彼女の後ろ姿を見るが……流石に色々と思う事があったので、立つ。
「あの、手伝いますから座って」
「大丈夫大丈夫。夜宮くんの方こそ大人しく座ってなさいね?」
やんわりと引き止められてしまい、後ろ髪を引かれる気分になってしまうのだが、彼女の言い分に従って座り直す事にする。
本当に何も知らないでこうして見ているとランドセルがまだ似合いそうな背中の彼女は手際よく電動ケトルにお湯を注ぎ終え、その隙間時間に見るからに高そうな茶筒と風情のある急須に、趣深い茶器を2つまで、目に見えないぐらいの速度で用意し終えていた。
「お湯が沸くまでの間、何か世間話でもする?」
「……えっと」
「いきなりそう言われても何から話せばいいかで困惑しちゃうよね、分かる分かる。先生もそういうの苦手。だけど、頑張って話してみるから聞いてくれると嬉しいな?」
そういう台詞って、話が上手な人のいう台詞ではなかろうか。
そう思うオレを他所に、彼女は軽快な調子で話しかけてきた。
「多分、夜宮くんがすっごく気になっているのは吸血鬼の学校の事なんかよりも……転生の事だよね?」
「……ご察し、ありがとうございます」
「聞きづらい話題だもんね。いきなり転生だとか言われても何言ってんだこの人って思うよね。私も思う!」
ここで彼女が口にしている『転生』という事柄については、オレも詳しくは知らない。
よしんば知っているとしても、昨今のネット小説だとか書店に並ぶような文庫本が取り扱うような転生……それに近いものか、それと全く同じものである事には間違いないのかもしれない。
「これに関しても長生きしている先生も思い切り失敗しちゃったなーって自省するぐらいには大反省してます、うん。どうせなら上手く隠しながら上手いこと再婚したかったんだけどね」
実際問題、転生なんて事が本当にあるのだと言われても余りにも荒唐無稽が過ぎて発言者の事を冷めた目で見るに違いない筈なのに、オレはどうした訳か彼女の言葉が本当の事であるに違いないと感じていた。
「いざ本当に再会しちゃったら、つい身体が勝手に動いちゃって。頭が真っ白になるって、あぁいう感覚なんだね……えへへ、年甲斐もなく初恋してた時を思い出しちゃった」
それは吸血鬼が実在するのだから転生だとかいう馬鹿げた事もあるに違いないという考え方からなのか、それともこの理事長先生が話しているからなのかは分からないし、もしかしたらその両方が理由なのかもしれない。
「いきなりキスされた側としては、まぁ、びっくりしましたけど。というか、色々と時系列がおかしくないですか? 仮にオレが転生したとしても、その……100年前でしょう?」
「かさごちゃんの事? 確かにそれだとかさごちゃんは15歳じゃなくなるからね。だけどそれは人間の常識。私みたいな真祖が子供を産むのってかなりイレギュラーなんだよね。だってほら、吸血鬼って胎生じゃなくて血液を媒介にして個体数を増やす訳だし? 真祖ってそれの王様みたいなところあるじゃない? 長命種になると
「……えっと、その、つまり?」
「100年遅れで妊娠して、つい最近に出産したの」
なるほど、流石は吸血鬼の中の親玉と呼べるべき存在。
とても理解が難しい生態系をなさっていた。
「……色々と真祖は規格外だって事がよく分かりました。だからですか? 転生についてオレは詳しくは知らないんですけど、そういうのを一目見ただけで分かったというのは」
「うん。そりゃもちろん。私の真祖パワーと乙女心パワーに初恋パワーがなんかこう上手い具合に合体して、二度目の一目惚れが出来ちゃった!」
まるでマグマを思わせるような惚気を彼女がしたのと同時に、グツグツと電動ケトルの中の水が沸騰した。
「おっ、沸いた沸いた。じゃあ今からお茶を作るから待っててー? あ、そうだお茶請けは何にする? 順当にせんべい? それとも非常食用のカップラーメン? 私が勝手に持ち込んでる秘密の和菓子? 何でも良いよー?」
「……せんべいでお願いします」
「おっ、渋い趣味してるねー? じゃあ先生もせんべいにするー!」
「因みになんですけど、オレってその100年前に理事長先生が好きになった人と似てるんですか。その、外見、とか」
「全然似てないね? 私としてはそっちの見た目の方が好きだけど」
「……即答ですか」
「でも、中身はすっごく似てるよ。正直言って気持ち悪いぐらい。生き方と経歴が少し違うだけのあの人だ! ってのがすぐ分かったもん。うん、あれこそ女の直感だね!」
「……即答ですね」
「私が好きになった人だからね。それぐらいは余裕余裕。むしろすぐに気がつかないと妻失格じゃない? 私は彼の目に見える箇所も、目に見えない箇所も、全部全部好きになった世界で1人だけの女なのです」
どうだ、凄いでしょー。好きになっちゃいなよー?
そう言わんばかりに彼女ははにかみながら、出来立ての玉露茶とせんべいをご馳走してくれたのだった。
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