第24話 ダンジョン辞典
# ダンジョン辞典
*だんじょんじてん* 【名詞】
## 意味
1. 「ダンジョン辞典」は、正式にはURスキル『
## 解説
迷宮の出現は、剣と魔法のファンタジーが現実となる劇的な変化を世界にもたらしたわん。ゲームのようなステータスや特殊なスキルが発現し、人々は新たな脅威と可能性に直面しているわん。ボクたちが編纂しているこの『
## 類義語
- 攻略本
- 探索者の手引書
## 閲覧者コメント
* 新人にはまずこの本を読めって言うね。基本的なことは全部書いてあるから、これがあるのとないのとじゃ生存率が段違いだよ。 -- ベテラン
* 以前はファンタジー小説の類だったはずが、今や一番読まれる実用書に。人類の適応力には驚かされますね。 -- 宮浜県立図書館司書
* エアフォン版は本当に便利だよな! どこでもすぐに情報にアクセスできるし、リアルタイム更新はマジ助かるわん! -- 探索者志望の高校生 匿名希望
## 追記メモ
- 『ダンジョン辞典』は、実はURスキル『
- 最新の迷宮発見情報や迷宮再構築の報告が急増中だわん。編纂作業が追いつかないほど情報が溢れているわん…。
◆ ◇ ◆
―― 『ダンジョン辞典』
後世のダンジョン史においてダンジョン研究の分野は『ダンジョン辞典』なくしては語れないとされる。
その『ダンジョン辞典』が注目されるようになったのは初の異世界人、ダークエルフの出現を予言したからと言うのが通説となっている。
ダークエルフ事件から一週間ほど経ち、世間はともかく俺の周りは落ち着いてきた。
そして、久々にパーティメンバー全員がいつもの部屋に揃った。と言っても
最後に部屋に入った俺が椅子に座ったところで先輩が立ち上がる。
「というわけで、『ダンジョン辞典研究同好会』が発足しましたにゃ! パチパチ、ぱちぱちぃー、はい、シンラっちも拍手にゃ」
「お、おう。って
よくわからないまま拍手をする。
「元々、この研究室は勝手に使ってたんですけど、今回の事件で『ダンジョン辞典』関連の情報もギルドにある程度公開したこともあって、いっそシンラ君の『ダンジョン辞典』研究を謳って同好会を作ろうっと事になったんです。あ、ダンジョン辞典がシンラ君のスキルだってことは明かしてませんから大丈夫ですよ」
「これで、大手を振ってこの部屋が使えるにゃ」
「なるほど、確かに『ダンジョン辞典研究同好会』を作って部屋を自由に使えるのは良いことだな……俺の許可とかがない事以外は。ん? けど、同好会を作るのって最低人数五人じゃなかったか?」
「ええ、ちゃんと五人揃えましたよ。もうすぐ来るはずです」
ちらりとエアフォンを確認した立夏さんがそう言い終わるか終わらないかのタイミングで聞こえてきた足音が部屋の前で止まった。
「失礼しまっす! この度、
「ちょっと、兄さん。ここは学校よ、あ、同じくフェリスです。リッカさん、シノブさん、それに、シンラさんも宜しくお願いしますね」
扉を開いて入ってきたのは先日も街を案内した騎士団の一員、ダークエルフの双子、ゼファーとフェリスだった。
なお、セファーは上半身を九十度に曲げてお辞儀をした姿勢で静止している。
「二人共いらっしゃいにゃ。後、ここは騎士団じゃないからゼファーももうちょっとゆるゆるで良いにゃ。おやつ食べる?」
「うっす、食べます。シノブの姐さん、ありがとっす」
「シノブさん、ありがとうございます」
ゼファーとフェリスの二人はアウレム王国騎士団第十三部隊の最年少、十七歳であり俺達とは年も近い事もあって仲良くなっていたのだ。
そして、騎士団の皆さんがこちらの世界に滞在するにあたってはこちらの基準で未成年だったため、彼津高で受け入れる事になった。
そこで『言語理解』スキルを持つ俺達と一緒に行動することになったらしい。
なお、『言語理解』スキルとまではいかないが翻訳の魔法もあり、フェリスがその魔法を少し使えるというのも二人が騎士団とは別行動となった理由の一つでもある。
「これで全員揃ったわね。あ、ぬこ様、この二人にもわん太を見えるようにして貰えるかな?」
立夏さんが何やら袋を開けながら俺の頭の上のぬこ様に頼む。
『うなっ!』
トンッと軽やかに頭の上から降りたぬこ様はとてとてと二人の方に向かうが双子は実体化したぬこ様を見て固まっていた。
ぬこ様はそんな双子に近づくと二人の頭を肉球でてしてしと叩く。
『にゃっ、にゃにゃ、うにゃ』
「はっ! 精霊様! えっ、ぬこ様なんすか?」
「ええ、こちらの猫が『ぬこ様』。そして、こっちでおやつに夢中なのが『ダンジョン辞典』の
「……せ、精霊様が二人も……」
困惑した表情の双子に対して立夏さんの目が光る。
「アウレム王国には精霊がいるの? ぬこ様とわん太君を精霊と呼ぶってことは少なくとも似た存在が居て貴女達も認識出来ていたって事よね――」
「んにゃぁ~」
ぬこ様はジャーキーを咥えながら俺の膝の上に転がる。
「シンラっちは次に入るダンジョンはどこが良いかにゃ? ゼファーとフェリフェリも増えたしビル型ダンジョンも面白いと思うのにゃ――」
『マスター、次は「和菓子屋マップ」のページを増やさないかわん? 夏の和菓子とか良いと思うわん――』
途端に騒がしくなる研究室の中、URスキル『万象言海(ダンジョン辞典)』を手に入れてまだ一ヶ月と経っていない事を思い出した。
世間で言われているようにこの歴史の転換点に『ダンジョン辞典』が関わっているのは不本意ながら事実である。
URスキルの持ち主は否が応でも波乱万丈な人生を送ることになる。
どこかの番組で力説されていた言葉をふと思い出す。
できれば平和な日常を送るぐらいがよいなぁ、そう思いながらぬこ様のお腹をもふもふするとMPが回復する気がした。
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