第6話 ギャルの待ち伏せ
金城愛希から目をつけられてしまった俺だが、意外にもその後の休み時間や昼休みに声をかけられることはなかった。
「それじゃ、帰りのホームルームはこれまで」
帰りのホームルームが終わり、各々の放課後の活動のために散っていく。
帰宅部の俺もまた、階段を降りて昇降口へと向かった。
今朝、金城が最後に発した「あとで」とは一体なんだったのだろうか。
俺の本をまだ狙っているのかと思ったが……あれから声をかけられることはない。
(いや、よく考えたら相手は飽き性で有名な飽き性ギャルの金城愛希なんだぞ?)
あとで——なんて言っても、飽き性なんだから「やっぱあのキモオタと話すの飽きたー」とか思って、もう話しかけてくることはないんじゃないか?
高校中のイケメン男子どもからされた告白を「飽きた」の一言で撃沈させてきた女子なんだ、俺なんか遠の昔に飽きていてもおかしくない。
(ふぅ、飽きてくれたなら好都合だな)
ラノベによくいるオタクに優しいギャルなんて生き物はこの世に存在しないし、仮に存在してもギャルがオタク文化に精通していなければ話が合うわけない。
金城愛希と俺は席こそ前後でも、生きてる世界も、人間としてのステージが遥かに駆け離れた存在なんだ。だからそれでいい。
それに、彼女いない歴年齢の俺が女子と話すなんて普通に無……理?
俺が昇降口の靴箱の前まで到着した時、俺の靴箱の前にヤツが立っていた。
「お、おまっ……」
帰ろうと思ってここまで来た俺の前に立ち塞がる金髪巨乳のギャル……そう、金城愛希だ。
金城は腕組みをしながら靴箱に背中を預け、昨日みたいにスマホを触っている。
ま、待ち伏せ? なんで?
「遅い。ほら行くよ」
「はあ? ま、待てよ金城。行くも何も……そんな急に言われても」
「なに、もしかして用事とかある?」
「用事はそりゃ、ないけど……」
俺は自分が帰宅部であることを初めて恨んだ。
ていうか、金城に待ち伏せされてるとかなにがどうなってんだよ。
「い、行くか行かないかはさて置いて、俺なんかを連れてどこに行くんだよ?」
「え? 朝に約束したじゃん。わたしでも飽きない本見繕ってもらうって」
は……し、してないが! いっっっさいしてないが!
このギャル、なんか勝手に自分の脳内で都合よく話を進めてるんだが!!
「昨日の映画もそうだったけどさ、西山って博識なんでしょ? 友達作らずいつも本読んでるし」
「ぐっ……」
「博識」と言われて褒められたかと思えば、「友達作らず」の部分だけでオーバーキルを喰らう俺のメンタル。
こいつの中の俺のイメージ、そんな感じだったのか。
「で、でも……俺みたいな陰キャより、もっとクラスの陽気キャ男子とかの方が、金城とも趣味が合うんじゃないか? そっちの系の男子を誘えばいいんじゃ……」
「あいつらは死んでも無理。全員話す前から飽きるし、目がキモい。ほら、グダグダ言ってないで行くよ」
金城は吐き捨てるように言って、先に校門の方へと行ってしまう。
話す前から飽きるって……ギャルと陽キャ男子なんて同じようなグループなのに、なんでそんなに嫌悪してるんだ?
てか……それってつまり俺なら飽きないってことなのか?
「理屈が分からなすぎるだろ……あのギャル」
俺はため息混じりに靴箱から革靴を出すと、柑橘系の良い匂いがする金城の背中を追った。
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