第十四章 ザ・キング・オブ・ウィザーズ’21 前篇

幕間 その一

我が登場人物を紹介してやろう(ススハー)



われはヨスの統治者であり、〈イグ〉に仕える神官長でもあるススハー。

 これより、第十四章に登場する主な登場人物達と、これまでの粗筋あらずじを紹介する。


 今章は登場人物が多い故、登場人物紹介のコーナーを断続的に設置してある。

 読者の皆には御了承願いたい。


 何でも、ルリヤノミヤとその従者達は北極へ向かうとか。

 我も行きたい所だが、こちらにも都合がある。


 我らが神である〈イグ〉をその身に宿した娘。

 彼女をの地へと送らねばならなんからな……。


※本項は登場人物の紹介と前章までの粗筋を記載しています。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承ください。


 本項の情報は作中の一九二一年八月時点のものです。



◆ 主な登場人物 ◆



◇ 宮森みやもり 遼一りょういち ◇


 魔術結社九頭竜会くずりゅうかいに入会させられてしまった青年。

 皇太子 瑠璃家宮るりやのみやの命を救った功績により、幹部の地位を手に入れた。


 宗教儀式や古代文明に造詣ぞうけいが深く、好きな煙草の銘柄はゴールデンハット。


 御霊分みたまわけの術法で人格を切り替える事ができ、人格を切り替えた際は〔うら 宮森〕などと呼称される。


 外吮山そとすやまの闘いで死亡したおり、禁断の魔導書〈死霊秘法ネクロノミコン〉をインストールされ蘇生を果たす。


〈ショゴス〉と融合した事により〈深き者ディープワン〉の形質が発現。

 また故郷へ里帰りした際、〈スクタイ〉と呼ばれる邪神の末裔まつえいだと判明した。

〈スクタイ〉の末裔としての名は〔スグタ・イツヒコ〕。


 実は、後に代表的な怪奇作家となるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが〔救世主〕になるための試験体という事が判明。

 ラヴクラフトを〔救世主〕にまつり上げ地上界を破壊しようとした〈影〉の野望を打ち砕いた後は、ラヴクラフトと友誼ゆうぎを結び寿命の一部を託した。


☆ルリヤノミヤの従者との事だったが、明らかにそれ以上の関係である……。


 この男は旧神に寝返った〈スクタイ〉の子孫らしい。

〈ショゴス〉をその身に宿しているのは、〈深き者〉の血筋からいって妥当だとうだ。

 だが〈死霊秘法しりょうひほう〉を据え付けられ、あろう事か〈ミ゠ゴ〉とも融合を果たしている。


 これほど多くの因子をその身に受容できようとはにわかには信じがたい。

 しや旧神の……。



◇ 瑠璃家宮るりやのみや 玖須人くすひと 親王しんのう ◇


 神日本帝国しんにっぽんていこく皇太子で、後の神日本帝国太帝たいてい

 全世界に破壊と殺戮をもたらす事で邪神の復活を画策し、あやとの間に邪神復活の鍵となる娘、ていを儲けた。


 自身にも凶大な邪神の一柱ひとはしらを定着させ、九頭竜会では瑠璃家宮 派(海軍派)を率いる。


〈ショゴス〉との融合に成功しており、短時間であれば肉体を異形化させる事が可能。

 ただ肉体の急速な石化を招いてしまう。


 強大な念動術サイコキネシスや催眠術などを幅広く使いこなすため、神力しんりきを開放すれば全魔術師中最強の実力と目されている。

 異形化した際は、霊力生成物質を分解する触手が最大の武器。


 自身が所有する祭器、〔足玉たるたま〕を宮森に下賜かしした。


 宮森が小終末しょうしゅうまつ時に地上を去った〈スクタイ〉の生まれ変わりだと判明した後、彼と再び絆を結ばんと画策する。


 アメリカ旅行のさい使っている偽名は強羅ごうら ひろ


 実は大昇帝たいしょうていとは親子ではなく、異父兄弟の間柄あいだがらと判明した。


☆同胞の命を盾に同盟を勧めるとは、全くもって不遜ふそんの極み。


 だが、こ奴の御蔭で地上進出の足掛かりが出来た。

 いずれは敵対する宿命さだめなれど、今はその時ではない。

 先ずは地上へ進出し、大量の邪念を獲得せねば……。



◇ 草野くさの 磯六いそろく ◇


 神日本帝国海軍少佐。

 後に連合艦隊司令長官となり、神日本帝国を太平洋戦争へと導く。

 アメリカ合衆国と手を結び、瑠璃家宮の目的を大成させるよう陰謀を巡らせる。


 邪神の一柱ひとはしらを定着させており、瑠璃家宮の最も信頼する側近のひとり。


 超長距離間での精神感応テレパシー遠隔透視リモートビューイング遠隔操作リモートコントロールが固有術式。


 駐在武官ちゅうざいぶかんとしてアメリカへ渡っており、現地の魔術結社と関係を深めている。

 また、アメリカ合衆国海軍との橋渡し役も務める。


☆とにかく外面そとづらはいい男だ。

 庶民的な雰囲気も相まって、部下からの信頼も厚いらしい。


 勿論もちろんそれは見せ掛けに過ぎぬ。

 腹の中では、次回の大戦でいかに上手く民衆を虐殺できるかだけを考えている狡猾こうかつな男よ。


 ルリヤノミヤより感情が読みにくい上、祭器を下賜かしされているようだな。



◇ マーシュ艦長・ギルマン副長 ◇


 ベテランの潜水艦乗りで、陰子力いんしりょく潜水艦へと改造されたボウヘッドかいの艦長と副艦長。


 ボウヘッド改の乗組員はひとり残らず〈深き者ディープワン〉で、彼らもそうである。


☆悔しいが、地上進出は〈深き者〉とそれを指揮する〈※※※※〉に先を越されてしまった。


〈深き者〉らは小終末が訪れタルタリア文明が滅んだ後、原始的な生活をせざるを得なかった当時の地上人達へ言葉巧みに近付く。

 そして金細工や豊漁をえさに、人間との交配にぎ付けた。


 世界各国の沿岸には、〈深き者〉の集落が点在している。

 そこを拠点に各国の政財界へ食い込んでいったのだろう。



◇ エドマンド・キューブリック大佐 ◇


 後のアメリカ合衆国海軍大将で、アメリカ合衆国海軍に根を張る魔術結社ダゴン秘儀教団ひぎきょうだんの一員。


 瑠璃家宮 派と懇意こんいにしており、アメリカ合衆国での活動をサポートする。


☆魔術師としての腕は凡庸ぼんようだが、指揮官としての統率力には定評がある。


 アメリカ合衆国海軍の力を利用すれば、我が一族も世界各地へおもむけるだろう。

 その利点に比べれば、科学技術の供与など安いものだ。



◇ ヤトナカ ◇


 現在はカリフォルニアのネイティブアメリカン居留地に住むヒパウェイ族の青年。

 ヒパウェイ族の呪術師パトの弟子に当たり、自身も魔術師である。

 アメリカ大陸横断の為、ガイドとして瑠璃家宮に雇われた。


 沈着冷静で無口だからか、やや取っ付きにくい。

 だが度胸と責任感にあふれ、危険をかえりみず困難に立ち向かう。

 行為から見れば完全に侵略者である白人のり方にも関心を示すなど、ネイティブアメリカンにしてはドライな性格の持ち主。


 過酷な土地で生きるための知恵を持ち、戦闘要員としても優秀。


☆〔ヤトナカ〕という言葉は、北アメリカ大陸先住民の言葉で〔嵐の番人〕という意味がある。


 この男、ルリヤノミヤに与しているが我らの神とも相性が良さそうだ。


 我が神の依代よりしろたる、オリーブ・コーフィールドを差し向けてみよう……。



◇ 井高上いたかうえ 大吾だいご ◇


 大昇帝 派を束ねる魔術師で、神日本帝国陸軍大佐。

 軍人らしからぬ独特な感性を持ち、エキセントリックな言動で部下達をドン引きさせている。

 チベット仙境勢力と手を組み、瑠璃家宮 派の壊滅を狙う。


 浦塩派遣軍うらじおはけんぐん参謀としてシベリアに赴任していたが、第五章ではロシアから青森まで空を飛んでやって来た。


 魔術戦闘の第一人者で、自身も様々な魔術を操る。

 得意分野は風と冷気。

 定着させている邪神は〈イタカ〉。


 九頭竜会 瑠璃家宮 派と入門いりかど 和仁吾郎わにごろうの策略により、北極中心にあるヴーアミタドレス山からのマグネティック・トラクターウエーブ(電磁牽引波でんじけんいんは)をその身に受けてしまう。

 その効果で常に北極圏へ向け引っ張られてしまい、日本本土に戻れなくなってしまった。


☆電磁牽引波を受けているにもかかわらず、今もって絶大な影響力を発揮している。


 また電磁牽引波を受けている事を逆手に取り、電磁気の研究にも熱心らしい。

 これは近い内に大きな動きがありそうだな……。



◆ 前章までの粗筋 ◆


 ウィンチェスターハウスで魔女キザイア・メイスンを降した宮森と瑠璃家宮は、満を持して東海岸への旅を開始。

 そのさい地底都市クナ゠ヤンを探索し、巨大な水晶柱すいしょうちゅうを発見した一行。


 その水晶柱の正体は太古の昔に栄えた植物……伝説で語られる世界樹の遺骸だった。

 瑠璃家宮の目的は、古代の記憶を宿す世界樹の遺骸にアクセスする事。

 そして、世界樹に内包された記憶を手に入れる事だった。


 その際〈蛇人間サーペントピープル〉達による襲撃を受けた一行。

蛇人間サーペントピープル〉達を束ねるススハーと戦闘になったものの、瑠璃家宮が和解案を示し同盟を結ぶ事に。

 ススハーは同盟の条件として、彼らが崇める蛇神〈イグ〉の依代よりしろ捜索を依頼する。


 一行は依代捜索の途中、〈クトーニアン〉と呼ばれる地底生物から襲われていた。

〈クトーニアン〉達は何者かから脅されており、その何者かはオクラホマ州のタルサで白人をき付け暴動を起こす。


 多くの罪のない黒人達が苦しむ中、一行は〈クトーニアン〉達を撃退。

 瑠璃家宮は〈クトーニアン〉達を挑発し、そのおさを誘き寄せる事に成功した。

 そして〈クトーニアン〉の長である〈シャッド゠メル〉を説き伏せた瑠璃家宮は、〈クトーニアン〉達を従わせる事に成功する。


 その後ボルチモアで〈イグ〉の依代となるべき女性……オリーブ・コーフィールドを見付けた一行は、地底都市クナ゠ヤン下層に位置する赤く輝くヨスへオリーブを届けた。

 儀式は成功し、オリーブはその身に蛇神〈イグ〉を宿す。


蛇人間サーペントピープル〉からの依頼を果たした一行は、ロードアイランド州のプロヴィデンスでシオボルド老師を名乗る青年と出逢った。

 彼こそが後にコズミックホラーの巨匠きょしょうと呼ばれる、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトその人。


 実はこのラヴクラフト、ほし智慧派ちえは教団と呼ばれる邪神崇拝結社が擁立ようりつした〔救世主〕と呼ばれる存在だった。


 ラヴクラフトを〔救世主〕として覚醒させ旧神打倒を目論む存在。

 それは宮森 達が鳴戸寺なるとでら 保夫やすおと呼ぶ謎の怪人物……〈影〉だった。

 鳴戸寺は、〔救世主〕であるラヴクラフトに白痴はくちの魔王〈アザトース〉を定着させるための試験体、それが宮森だと明かす。


 戦いのすえ鳴戸寺を破った宮森。

 彼はラヴクラフトと友誼ゆうぎを結ぶと、大英帝国で開催される魔術結社の世界大会へ向かうべくアメリカ大陸を後にした。





☆今章では大英帝国を舞台に、各魔術結社がしのぎを削る戦いが幕を開ける。

 当然、大会を運営する大英帝国も何らかの利得を期待しての事だろう。


 戦いの先に何が待っているのか、その目でしかと見届けるがいい。


 これより第十四章の開始となるが、ミヤモリとルリヤノミヤは大英帝国まですんなり辿り着けないだろう。

 そう、北極圏にはヤツがいる。


 復讐に身を焦がす風と山の神が、手薬練てぐすねを引いて待っているはずだ……。



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