枝垂れる藤の花。花を透してこぼれる日差し。突然の婚約者の訪問。そして告げられる別れ。静謐な筆致で、そして絵画のように美しく、男女の別れと心の移ろいが描かれる。大きな感情のうねりはないが、喪失感の陰り、心の静かな再生、そして決心が静かに語られていく。希望を感じる読後感も気持ちが良い。人気のないギャラリーで静物画を見ているような気分になる美しい作品。