小さな窓の中の混沌

陽麻

小さな窓の中の混沌

その窓の中は、大勢の人たちの話声がワンワンとひびいている

今日あったこと、

日々のこと、

愚痴、

そんなことをみんな話していて


わたしはその窓を眺めるのが好きだった


だって、いろんな人の声がきけるから


嬉しそうだったり楽しそうな声だと、こっちも嬉しくて楽しくなり

苦しくて泣きそうな声だと、こっちも苦しくて泣きそうになる


どっちにも声をかけてみたくなるけれど

そこはすこし距離をおいて

わたしは静かに静観する


だって、なにかを言って

せっかくの楽しい気分を台無しにしてしまったり

もっと苦しくて泣きそうな気分にさせてしまったりしたら

申し訳ないから


わたしは寂しいから、いつも小さな窓を見ている


もう止めなきゃなと思っていても

もう寝なきゃなと思っていても


寂しいから


いつも気が付くと小さな窓のなかの混沌を眺めてしまうんだ




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小さな窓の中の混沌 陽麻 @rupinasu-rarara

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