第24話 花ひとつの手紙
前略
先生、ずいぶんご無沙汰しています。
先生はお変わりありませんか。ご家族もお元気でいらっしゃいますか。
実は先日、駅であなたをお見かけしました。橋本の近くの駅です。
その日はとても疲れていて、もう何も考えられないと思っていました。夕飯も、もしかしたら食べないつもりだったかもしれません。
だけどあなたがホームに並んでいるのを見て、ああ、先生だと思いました。それで、今日帰ったらちゃんと掃除をして、ご飯を作って、入浴剤を溶かしたお風呂に入ろうと思ったんです。
わたしは先生のいらっしゃる列とは違うところに並んでいましたから、先生はお気づきになられなかったでしょう。
それでいいのです。
王達の駅に着いたとき、ふと、閉店間際の花屋が目に入りました。
もうお花は少なかったけれど、つい立ち寄ってみました。
フリージアという花です。そのときのわたしにはその黄色がとても素敵に見えて、ひと束、買ってみました。暗い家路に、明かりが灯ったようでした。
先生、あなたがあの日、どんな思いでおられたのか、わたしにはわかりません。
だけど、これだけはどうしても伝えなくてはいけないと思うのです。
あなたのおかげで、わたしは今、幸せです。
草々
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