価値ってのは内容で決まる19

「まぁ要するに君たちは自分の実力以上の力を発揮できないわけだわさ、ユーキャントウォールブレイク!ってやつ」


意味わからないように言葉を紡ぐ黒ヤギに烏山と和也は腹を立てる。


金ミツだけは煽りであることを理解する。


(このままじゃ三段構えだどうだとか以前の問題になる)


「2人とも!」


「うるさい!リーダーは僕だ!でしゃばるな!」

「お前のような女に頼るかよ!」

「ちょっと2人とも!」


和也が踏み込む。

そして、烏山が準備をする。


普段ならそれでよかった。


和也の懐に黒ヤギが入り込む。


「っな!」


一方的な拳の乱撃。


「って…てめ…やめ」


反撃の余地すら与えずに攻撃を続ける。


なんとか槍を振るおうとするが。


「間合い的に槍じゃ無理ってことよ」


ひたすら一方的に殴られる。

必死になって魔力で身体能力を強化しようと和也は試行錯誤するが、すでに遅い。


意識が朦朧としており、自分のしてることがわからなくなる。


(なんで…こいつこんなに強いんだよ)


「和也!いくぞ!」


(くるのか…避けねぇと烏山の技に巻き込まれ…)


飛んでくる炎の塊を目に映して、必死に和也は逃げようと足を動かそうとする。


が、足を掛けられてバランスを崩す。


そしてそのまま浮いた体を持たれて…


(嘘だろ…あ…)


炎の塊が和也に当たる。


それと同時に和也は一定ダメージを超えて退場となる。


「はぁ、これなら一対一の方が魔力を使っていたよ」


それをやった張本人の黒ヤギはそうため息を吐くのだった。


「嘘だろ、なんで僕の魔法が…なんで!」

「そういうこと、タチが悪いわよあんた、超近接にしたのは初めから同仕打ち狙い!」


そんなこと言われても黒ヤギはどこと吹く風。


「いやぁ、それ以前にガッカリだよ」


そう言ってのけるのだった。



「ひ、ひでぇ」

「こ、これは…黒ヤギってこんなに性格悪かったのか…」


黒野と銀ヤギの言葉にブラックは苦笑いする。


「言ってやるな…そもそもこれは相手も悪いぞ」

「まぁ、そうよねー。一回連携って何かって聞いてやりたい気分よ」


2人は意外そうに見る。


「でも今のは明らかに連携を崩され…」


「「は?」」


「ひぃっ!」

「黒野2人の話はちゃんと聞いた方がいいぞ、黒ヤギは笑って誤魔化すけどあの2人は研究者気質で面倒な一面あるから」


2人は「酷くない」と言うが銀ヤギは知らん顔。


「連携に必要なものはなんだと思う?」

「えーっと信頼関係…や配慮」

「ふむ、銀ヤギは?」

「えっと…えっと…理解と視野の広さ」


ブラックは答えに満足して聞く。


「んじゃ2人の間違えてることを教えてやる」

「「え?」」


「それは配慮と視野の広さだ」

「そこが違うなら連携なんて取れないでしょ?」

「逆に聞くが黒野、お前の扱うゴーレムは攻撃を遠慮してるのか?」


その言葉に黒野は固まる。


それは僅かにだが答えに辿り着いたから。


「あとは三谷が答え合わせしてやれ」

「わかったわよ。要するに配慮や遠慮とかなんて気を回すくらいなら1人で戦った方が強いってことよ」


黒野はそういうことかと気付く。


黒野は確かに物量作戦を使うが不必要なゴーレムは予備にしており、ゴーレム全員で殴ろうとして効率が悪くなるくらいならゴーレムの数を減らすことがある。


それと同じである。


言ってしまえば連携する際にわざわざ連携に支障がないように無意識に手を抜いてしまう。


それは連携ではなくただの連撃である。


「何よりも今回は2人して頭に血が昇っていた。よっぽど普段から神経をすり減らしてるのでしょうね、配慮なんて相手のことなんて考えることもせずに魔法を放って、魔法が放たれるのを理解するのに遅れて結果自滅」


2人は息を呑む。


「その結果アイツは今一切魔力を使わないで戦えてるわけよ」


最後の言葉に2人は固まる。


「「今なんて!?」」

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