番外編3:伝説のナイト「K」かく語りき

 我々は、ルナティック。すなわち、VTuber「ルナ・セレス」様を熱心に応援する、古参ファンの集まりである。

 我々の間には、一つの伝説があった。

 それは、謎の紳士「K」の存在だ。


 彼が現れるのは、決まってルナ様がピンチの時。

 配信が荒らされれば、長文のスーパーチャットでアンチを一掃し、場の空気を浄化する。

 ルナ様が自信をなくせば、的確な言葉で励まし、我々ファンが言うべき言葉を代弁してくれる。

 彼のスパチャは常に冷静で知的。そして、誰よりもルナ様への愛に満ちている。


 我々は、彼の正体について、夜な夜な憶測を交わしていた。

「Kさん、実は運営スタッフなのでは?」

「いや、ルナ様の親族だろう」

「俺は、海外の石油王だと思うね。金の使い方が尋常じゃない」

「実はAIなんじゃないか? ルナ様を守るために作られた、守護神AI……」


 そんなある日、ルナ様が配信で「大切な人ができた」と報告した。

 我々は歓喜に沸いた。そして、誰もが確信した。

 その相手は、間違いなく「K」である、と。


「やっぱりKさんだったか!」

「伝説は本当だったんだ……!」

「我らがナイトよ、ルナ様を幸せにしてくれ!」


 もはや、彼の正体が誰かなんて、どうでもよかった。

 彼が、我らが愛するルナ様を、心から愛し、守ってくれる存在であること。

 それだけで、十分だった。

 我々は、これからも伝説のナイト「K」と、我らが歌姫ルナ・セレスを、全力で応援し続けることを、ここに誓うのである。

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