番外編2:同期はこっそり知っている

 私、田中由美は知っている。

 親友である佐藤葵に、最近、とんでもない変化が起きていることを。


 以前の葵は、いつもどこか自信なさげで、特にあの氷の彫刻こと高橋先輩の前では、借りてきた猫みたいに縮こまっていた。それが、最近はどうだ。

 なんか、キラキラしている。

 仕事のミスが減ったとか、そういうんじゃない。内側から発光している感じ? 恋する乙女オーラってやつ?


 そして、一番の変化は、あの高橋先輩だ。

 以前は葵のことなんて、視界の隅のゴミくらいにしか思ってないんじゃないかってくらい冷たかったのに。

 最近、やたらと葵のこと、見てる。

 それはもう、すっごい見てる。他の社員には絶対向けない、なんかこう……バターみたいにドロドロに甘い視線で。


 この前なんて、給湯室で二人がすれ違う瞬間を見ちゃったんだけど。

 一瞬、ほんの一瞬だけ、高橋先輩が葵の手をキュッて握ったの!

 葵は顔を真っ赤にして俯いてるし、高橋先輩は涼しい顔して通り過ぎていったけど、アンタの耳、真っ赤っかだからな!? バレバレなんだよ!


 ああ、間違いない。あいつら、絶対何かある。

 というか、付き合ってるね、100パー。

 あの葵が、社内恋愛、しかも相手があの氷の貴公子とは……。人生、何が起こるか分からないもんだ。


 まあ、泳がせておこう。

 親友の幸せそうな顔を見るのは、悪い気しないし。

 今度、二人をからかうネタができて、ちょっと楽しみでもある。

 頑張れよ、葵! あの氷像を完全に溶かしちゃうんだからね!

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