第10話「業・馬と免疫」
「なあ、死神、他の人の付けたロウソクの火をもらうと、悪い
「いきなり、難しいことを言うんだな。仏教において、ロウソクは仏様の智慧の光明と言われている。業は簡単に言えば原因と結果みたいなものだ。種を撒いて花が咲くみたいなものだ。業にも悪いものと良いものがある。ある人の一言のせいで会社を辞めたり、また、あの人の一言で生涯何かを成し遂げることになるとか」
薬王寺の近く、日和佐からバスに乗り高知県に向かっている。一番後の席に座り、バッグの中にシャム猫を入れ頭だけ出している。
周りに客はいない。
「俺はロウソクの火なんか、隣りで燃えてるのをもらえばいいと思うけど、本当に業もついてくるのか?」
「そう言われているな。お遍路は同じ宿に泊ったり荷物を置いて参拝なんかもするから、人の物は取らないという習慣を持ったほうがいいぞ。ポケットティッシュ1個でも借りた物はちゃんと返すとかな」
「ああ、そうゆうことか。そういえば、高校時代、同じ柔道部にイカれた小沼って奴がいて、電話をかけたいから10円くれって言うんだ。10円くらいと思って何度か貸したけど、一回も返してくれなかった。たった10円だけど、やっぱり嫌な感じがして、今は付き合いもない。これが悪い業かな?」
「そうだ、悪い原因と悪い結果だ。しかし、お前もマナーがなってないぞ。せっかくくれたマリちゃんの連絡先も、ゴミみたいなあつかいして、ちゃんと持ってるのか?」
「あれか……確かバッグの中に入れたはずだけど、何処だっけな?」
「マリちゃんと、もし一緒になったら、お前が食事をして食器を片付けなくても何も文句も言わないで片付けて、お茶まで持って来てくれる。部屋でゴロゴロしてても、病気になっても献身的につくしてくれるはずだ」
「えっ、なんでそんなことがわかるんだ?人生経験か?」
「お前も真実の目を持ってるだろ。それを使えば簡単にわかる」
「えっ、真実の目って、そんな使い方をしていいの?人のプライバシーじゃないか」
「お前はこれから神仙道になるんだろ?一般人みたいなことを言うな」
バッグの中から手を出し何発も猫パンチを出している。
「なんだ、使って良いのか、人の心を見てはいけないと思って見ないようにしていた……」
「むやみに見るものじゃないが、場合によっては見ないと痛い目にあうぞ」
「そうだったのか……ミキちゃんの心が見たかったな……残念だ」
「見ない方が良かったと思うぞ。もし、あの娘と一緒になったら、お前が食事して食器を片付けないと怒り出すはずだ。トイレのスリッパや靴の置き方まで注意される。あの娘は潔癖症のけがあるから、お前みたいな何日も風呂に入らなくても平気な奴は離婚するのは間違いない」
「そうなのか!? あのスタイルと綺麗な顔はたまらないんだけどな」
「若い男は綺麗な女性に弱いのは仕方ないが、暮らして楽な方がいいぞ。ノッチなんかも動物好きだから、お前が歳取って便を漏らしてもなんとも思わないぞ」
「まさか、そうなの?」
「あの娘は、小さい頃から馬と暮らしていたようで、犬や猫の扱いも上手だ、猫の抜け毛も排泄も気にしていない。わしの
「そういえば、そうか? シャム猫の糞って言ってビニール袋に入れて嬉しそうにしていたな〜」
「糞は自然の摂理だ。オーストリアの学者が免疫について調べたら、普段から家畜小屋に出入りしている子供にはアレルギーになる子供は少ないらしい」
「家畜小屋なんて糞だらけで、かえって病気になるんじゃないのか?」
「べつに、糞を食べるわけじゃない。糞が乾燥して空気中に漂う物や動物の持つ微生物や菌に触れているほうが免疫の状態は良くなるようだな」
「免疫って、たまに聞くけどなんなんだ?」
「免疫は、わりと最近に発見されたもので、まだ完全には解明されていない。しかし、免疫の扱いの上手な神仙道はいたぞ。腹の中にいる仏様を上手に使うんだ」
「う〜ん、ますますわからない」
「最近はトイレも水洗で街中も綺麗になった、風呂にも毎日入ったり、髪も綺麗だ。お前は頭が痒くなるまで風呂に入らんがな……」
「風呂に入ると、気が抜けてしまうんだ。風呂が嫌いと言うわけではないが、面倒くさい」
「昔は風呂に入る習慣も無かった。適度に入るのは血管のストレッチになっていいらしいが、皮膚を洗いすぎるのは良くない。何事も適度にやるのがいい」
📜📜📜神仙道ワンポイント。
宗教では業といい、インドの哲学ではカルマ言いい、良い行動をすれば良い結果が、悪い行動をすれば悪い結果が生じると信じられています。
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