第5話 史良:リラ

 快晴、瑠璃色るりいろの海は昼頃、陽の光に水面が時折、金剛色こんごういろに煌めいている。



 海に潜るのははじめてではないけれど、今回は多少の緊張といぶかしさをはらんだ。


 でもそれはすぐに解消した。


 感動で、だ。


 海の中にある巨木に、紫色の花が満開に咲いている。


 その数、約百本。


 群生する岩のいしずえの関係で織りなす、自然界の芸術的な海の庭に圧巻。


 太い幹のうろや葉陰なんかに、小ぶりな魚がいたりする。


 碧い海と紫色の花と、周りに住んでいる黄色い魚たち。


 色合い的にとても「素晴らしい」と普段は出てこない口調で感想をかなでた。


 ちなみに普段の感動の言葉は、「すげぇ」「ぱねぇ」。



 普段ひとは入らないから、なんでこの黄色い魚はなついているのか気になった。


 むしろ人間の脅威に見合ったことがないから、珍しがられているのかもしれない。



 その巨木について、最初は珊瑚を見間違えているのかと思っていた。


 なのに違う。


 立派な幹に枝と葉と花を持つ、植物だ。


 

 一説に、その木々がはえていたところが地殻変動ちかくへんどうを起こしたから海中にある。


 もしくは、誰かが植林したんじゃないかって話も聞いた。



 海はもちろん海水で、塩気がある。


 ・・・いずれにせよ、どうしてこの木々が海中で生きていられるのか。


 それはまだ定かではない。


 

 関連している魔法使いの存在のうわさに、


 やっぱり少し緊張といぶかしさを再度覚えた。

 

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