第3話 それは不変を思わせた


 坂道があって、赤瓦あかがわらの屋根畑が一望できる場所を見つけた。

 側にある植物の緑が青空に負けじと冴えている。

 風に揺れるさまはなぜか時の奇跡を私に連想させた。


 無邪気な笑い声は、死角にいる子供たちか。

 それとも土地の記憶だろうか。


 ・・・なにを言っているんだろう?

 不思議な気分。


「わ~、綺麗ですねぇ」


 おそれで口には出したくない、って思ってるはずの風景。

 口にするのを少し許されたんだろうか、と、また時の魔法の気配。

 

 永遠がたったような、時が止まったような、時が流れるのを全部見ていたような。

 そんな錯覚めいた症状に、自分はまだ何かが足りていないんだと自覚。


 なにが足りたないのかはまだ分かってない。

 

 例えば、赤瓦の作り方だったりを世の中に見るひともいるんだろう、と思った。

 空の色や雲の形で名前が違ったりすることだったりにも。


 とにかく私には何かが足りなくて・・・

 充実しているかもしれないけど、満足はしていないのかもしれない。


 足下あしもとに視線を落として、石畳いしだたみを見てみる。

 そして周りの植物を見て、再度赤瓦屋根畑を見渡す。


 充実しているし、満足しているのかもしれない。


 ・・・まるでこの場所は、不可思議ふかしぎだ。

 

 なんだったら、私がこの「不可思議」と言う単語を書き出すのに気づいていただろう?



 [ メモ ]


 緑色の柱屋敷はしらやしきや、山吹色やまぶきいろの瓦屋根を思いついた。

 実在するのか分からない。


 緑色の柱の屋敷:遊郭


 山吹色の瓦屋根:・・・こちらも遊郭


 単に普通の茶屋でも良いはずなのにな。

 空想の中でもそんなこと言ったら、間夫まぶいかまぶくないんだろう。


 ――

 ―――――


 抜けるように冴えている青空に、ふわっと足が軽くなった気がする。

 蓄積ちくせきして少し影っている気持ちも。

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