最初に鳴り響くのは、静かな古書店の時計の音。
新聞記事が伝えるのは、病院を舞台にした惨殺事件――そして三人の同じ姓。
読み手は事件の闇を追うのかと思いきや、物語は不意に「祝福」というタイトルの真意へと傾いていきます。
白装束の少女の登場は、空気を一変させます。
その口から告げられるのは――「わたしは、彼を殺さなくてはならない」。
それが主人公自身の名を呼んでいると明かされるラストは、背筋に冷たいものが走ります。
本作の魅力は、 緻密で静謐な描写と、不意に訪れる狂気の対比。
埃の舞う光、雨の残滓、水溜りの描写……一つひとつが伏線のように積み重なり、最後に「名を奪う宣告」へと収束していく構成は見事です。
読了後には、タイトルの「祝福」という言葉が恐ろしく、皮肉なものに響いてきます。
これは祝福なのか、それとも呪いなのか。
――答えを知るために、あなたもぜひこの物語を手に取ってください