光の中の影
承認の亡霊に追われるように書き続けたある晩、ぼくの投稿が珍しく「広がった」。
いつもは数十の反応で終わるはずの文章に、数百の通知が舞い込み、画面が赤く点滅を続けた。
胸の奥で、何かが一気に燃え上がる。
ついにぼくの言葉が届いたのだ、と錯覚する。
誰かが「泣いた」と書き、別の誰かが「救われた」と言った。
その文字列を見つめるたび、ぼくは、自分がようやく「生きている」と思えた。
けれど、その光の中には必ず影が潜んでいる。
「ありきたりだ」「自己満足」――そんな冷たいコメントも並んでいた。
どれほどの称賛に包まれても、その一言が心に爪を立てる。
光が強くなるほど、影は濃くなる。
ぼくの目には、光よりも影ばかりが大きく映った。
その夜、ぼくはスマートフォンを握りしめたまま眠れなかった。
称賛の言葉を何度も読み返し、批判の言葉を何度も削除しようとした。
だが削除しても、記憶からは消えなかった。
言葉は光より速く、影としてぼくの心に刻まれる。
朝になり、カーテンの隙間から光が差し込んだ。
その光を浴びながら、ぼくは奇妙な感覚を覚えた。
世界が明るくなるほど、自分の影は濃く、長く伸びていく。
承認は救いであると同時に、ぼくを確実に蝕む毒だった。
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