再び紡ぐ言葉
アオイの問いを振り払うように、ぼくは再びペンを取った。
書かなければならない――理由は分からない。
ただ、沈黙がぼくを締め上げるなら、言葉に逃げ込むしかなかった。
けれど、ペン先から出てくる言葉は、以前のものとは違った。
どこか震えている。
「見てくれ」「褒めてくれ」と、叫び声のように震えていた。
ぼくは自分の文章を見て、思わず吐き気を覚えた。
しかし、その吐き気すらも誰かに見せたくなってしまう。
矛盾に気づきながらも、止められない。
SNSに投稿すると、すぐに数件の反応がついた。
小さな赤い点が画面に灯るたび、ぼくの胸はぎゅっと縮んだ。
まるで心臓を直接つままれているような感覚だった。
嬉しいのか、苦しいのか、判別がつかない。
ぼくは机に突っ伏し、指先でスマホを何度も更新した。
「もっと」「まだ足りない」と、心の奥から声が湧いてくる。
それはぼく自身の声でありながら、ぼくを突き動かす亡霊の声でもあった。
深夜、画面の明滅に照らされた自分の顔を鏡で見た。
そこには、かつてのぼくではない、何か別のものがいた。
承認を欲しがるためだけに目を光らせる、獣のような影。
ぼくは、再び言葉を紡いでしまった。
それが救いなのか、破滅なのか――答えはどこにもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます