沈黙と孤独の深まり
沈黙は、最初こそ安らぎを装って近づいてきた。
批判もなければ、賛美もない。
誰からも見られず、誰にも言葉を投げかけない状態は、ひどく静かで、ひどく安全に思えた。
けれど、その安全は一瞬で安堵を食い尽くし、後には虚無だけが残った。
投稿をやめたSNSの画面は、まるで廃墟のようだった。
かつては文字と反応で賑やかだったタイムラインが、今はただの数字と記号の羅列に見える。
ぼくが黙ったところで世界は何ひとつ変わらない。
それを突きつけられるのが、耐え難かった。
沈黙は次第に孤独へと変わっていった。
人に会うのも億劫になり、誰かと話していても、自分の声がよそよそしく響いた。
言葉を封じることで、ぼくは他者との距離を無理やり切り離した。
その代償として、ひとりきりの世界に取り残されたのだ。
夜、ベッドに横たわると、スマートフォンの画面が気になって仕方がない。
誰かが、ぼくの不在を気にしていないか。
誰かが、ぼくを探していないか。
そんな都合のいい幻想を抱きながらも、現実には通知ひとつ届かない。
その沈黙の確かさが、孤独を倍増させていった。
アオイの存在だけが、かろうじてぼくを孤独の淵から引き戻していた。
彼女は、何事もなかったように、日常を綴り続けている。
そこには承認欲求の影も、数字への焦燥も感じられなかった。
ただ淡々と、彼女は言葉を編み続ける。
その姿を見ていると、ぼくはますます惨めになり、同時に救われてもいた。
沈黙はぼくを守りながら、確実にぼくを蝕んでいった。
言葉を捨てた代償に、ぼくは自分自身すら見失いかけていた。
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